「Let's go to Germany to assist」2005.10.27

世界中のサッカーファンが注目するドイツWCまで後一年をきりました。開幕戦のキックオフは6月9日、ミュンヘンにあるドイツ自慢のAllianz アリーナにて行われます。そこで、今からドイツサッカーの現状やドイツでのW杯準備の進み方や盛上りをリポート(レポート?)したいと思います。ドイツが開催国に選ばれて以来、新しいスタジアムが完成に近づくとともに、W杯への期待と興奮が日に日に高まってきています。先日までドイツで行われていたコンフェデレーションズカップ2005も、W杯に向けて大きな注目を集めました。

この数週間で世界のサッカーファンは来年の内容の“味見”をすることが出来たのです。今度W杯の会場となる12スタジアムのうち、ケルン(Köln)・ニュルンベルク(Nürnberg)・ハノバー(Hannover)・ライプチヒ(Leipzig)・フランクフルト(Frankfurt)の内の5カ所が今回のコンフェデにも使われました。ミヒャエル・バラック(Michael Ballack)(ドイツ)、ロナウジーニョ(Ronaldinho)(ブラジル)そしてリケルメ(Riquelme)(アルゼンチン)といった世界のトップ選手が集まり、素晴らしいプレーをファンに見せていました。平均よりスコアも高く、なかなか見られないレベルの試合になりました。例えば、ブラジル対アルゼンチンの決勝戦。スーパースタープレーヤーのアドリアーノ中心としたブラジルの魅力は、サンバ風のサッカーのみならず、いつもと一味違う予測できない戦術の新鮮さにもありました。全大会のなかで年齢の最も若いブラジルが、観客を喜ばせながら見事の3位で大会を終えた。

コンフェデはWorld Cupのオーガナイザー側にとっても、来年チャレンジとなる運営管理等のトライアルするチャンスでもありました。最初の印象としてはドイツというホスト国としても、またドイツオーガナイザーコミティーの管理などでも、世界の高い期待に答えられるワールドカップになりそうです。パーキング、バス停留所、アリーナ等への案内表示の数が少ない等といった細かい問題点は出てきましたが、これらは本番までに改善することでしょう。ドイツでは珍しいとされる問題もオーストラリア対ドイツの試合中、スタジアムで起きました。なんとビールがスタジアム内の販売店で売り切れてしまいました。このようなハプニングがあっても、現場のスタッフの反応が素早く、すぐに解決が出来たようです。全体的にファンの皆さんはとても楽しく過ごしていたようです。

セキュリティの面ではもちろんコンフェデではライバル意識でファン同士が本気でぶつかったりする訳ではないので、コンフェデはW杯大会と比べる事も出来ない。そこがセキュリティのギャップの証拠となったこと、そしてファンのエンターテインメントにもなった事と言えば、裸の乱入者が4人程ピッチに走り込みました。この件もW杯の時には必ず“改善されている”ことが約束されています。幸いな事に発煙筒なども今回の大会では一度も使われる事はありませんでした。

2006年W杯のモットーは“世界をゲストとして、友達として迎えます” “The World, as our guests and friends” “Die Welt zu Gast bei Freunden”ですが、この雰囲気をコンフェデ中にも感じられたのは“いつも元気で、フレンドリーで、みんなを手伝うためにいる2000人のボランティアスタッフのお陰なのです。

大スターの選手達もとても良い印象を受けたようです。例えばあのロナウジーニョはコンフェデの管理について“私達が快適に過ごせるように、出来る事をすべてしてくれました”とコメント。
豪チームのプレスオフィシャルも手厚いもてなし、トレーニング施設、トップレベルのアリーナなどについてコメントをし、今回のコンフェデに参加ができた事によって、オーストラリアもW杯に是非参加したいという熱望が高まっているとの事でした。

一方、ドイツのオフィシャルらも世界のプレーヤーたちの行動に感激をしていました。例えば元ドイツ代表の監督で、現在はレバークーゼン(TSV Bayer 04 Leverkusen)で働くルディ・フェラー(Rudi VÖller)のコメントですが、ブラジル代表がレバークーゼンのホームグラウンドで練習した時等の行動を“常に協力的でフレンドリーですべての状況で広い心を持ち、特にファンとの接し方はとても良かった”と。

今回のコンフェデとその周りの施設、環境面などからみて、今度のW杯も、ファンの思い出に残る大会となりそう。という期待が出来るのは、コンフェデ大会を経験した方々の印象が良かった事だけではなく、早くも改善されているところが見られるからです。

その改善されているところを一つ挙げると、最近ホットな話題になっているパブリックビューイングです。パブリックビューイングとは生放送されている試合をスタジアムの外側など、公式な場で放送をする事。Infront AGという放送権利会社が全64試合の放送権利を持っており、パブリック放送の場合はライセンス費を取れるように、と呼びかけています。これに対し、管理側はW杯の他のコストを考えると、更にパブリック放送にライセンス費をつけることはとんでもない、と主張しています。「負担します」というスポンサーもいない事は無いが、公式スポンサーではない為、認められず、FIFAに禁じられています。このような争いの犠牲者となるのはいつもファンの皆さん。チケットとファンの数を比べるとすぐ分かるのですが、実際に見に行かれるのはごく少数に違いない。そう考えると少なくともパブリックビューイングでなるべく多くのファンが観戦できるように心がけて欲しいです。

Franz Beckenbauerが代表するオーガナイゼーションコミティーも同意です。彼やマスコミからのプレッシャーのお陰で、InfrontとFIFAは厳しいルールを変えることにしました。Infront AGの方はライセンス費をとらないことにし、FIFAは正式スポンサー以外の飲食物をパブリックビューイングサイト(場所)で販売する事を認めました。

スタジアム内では最近まで“ドイツビールなしのドイツワールドカップ”になりそうだったのだが、ファン達は戦ったのです。2006年の開催国が決定するずっと前に、アンハウザーブッシュ(Anheuser Busch)という米国ビールメーカが4000万ドルでオフィシャルビール供給会社になる権利を購入していたのです。だがドイツのファンはもちろん、ドイツのビールメーカーにとっても、ドイツビールの無いドイツW杯はとても考えられないということで、熱い議論が始まりました。ドイツ(Bayernのニュルンベルク)のビールメーカーが反対デモとして、近くのFrankenstadionというW杯スタジアムを“ソーセージとビールのフードバンなどで囲む”と脅かすことも。次にドイツのビットブルガー(Bitburger)というビールメーカーも議論に入ってきました。以前、裁判でアンハウザーブッシュがドイツ国内で“Bud”ビールを販売する事が出来ないように決められました。というのはビットブルガーがBitとBudが間違えられたり、お客さんが混乱する事が心配で。
ビットブルガーはドイツ代表の正式スポンサーであるので、FIFAとドイツW杯組織員会(Organisation Committee)を通して交渉した結果、どちら側も納得するような決断になりました。ビットブルガーが12箇所のスタジアムのビールサプライヤーになり、アンハウザーブッシュはピッチの周りに広告を置けることになりました。この結果に誰よりも喜んでいるのはドイツのサッカーファンのみんなでしょう。せっかくドイツW杯なのにビールは外国の物、というのはなくなったのですから。

ライセンス関係の問題はハンブルグでも発生していました。ローカルクラブのハンブルガーSV(Hamburger SV)はAOLをスポンサーにしていて、スタジアムもAOL−アリーナと名付けられている。一方、Hamburger SVはW杯期間内とその前も、スタジアムはスポンサーと無関係である事を約束しています。この2つの契約はお互いに同時には存在できない。
AOLは非公式スポンサーとしてプロモーションなどでWCの名前を使う権利を生かしていた。“W杯2006スタジアム、AOLアリーナ”など。だがFIFAはYahoo!などといったW杯公式スポンサーとの関係も確実にしなければならなかった。 ハンブルグという街自体がホストシティーである権利も失われそうになりましたが、Hamburger SVとAOLで解決が見つかりました。AOLは“World Cup”の名前を使ったマーケティング活動を一切止め、AOL−アリーナのスタジアム名までW杯期間中だけ“Stadion Hamburg”に変えました。

このように、スムーズな道のりとは言えないものの、問題が発生すると素早く解決を見つける事によって、ワールドカップ2006を待つファンの皆さんの満足と期待はこうしてに高くなっています。

そして、ドイツ代表チームにもW杯への期待が高まってきています。その理由の一つはユルゲン・クリンスマンが元代表チームメートのルディ・フェラーに代わって監督になったことでしょう。
新監督の目標は「2006年ドイツW杯でのドイツ優勝!優勝あるのみ」だそうです。彼の“やり方”、そしてドイツサッカーのテーマを一言で表すとキーワードは「イノベーション(革命)」であるそうです。

また彼は長年の海外経験もあって、今はドイツのチームの為に、アメリカで学んだトレーニング方法を活かした、彼オリジナルの哲学に基づくトレーニングプログラムを行っています。
例えば、ドイツ代表は今、心理学者、メンタルコーチ、栄養士といったエキスパートを雇っています。選手たちに対し定期的に機能性、コントロール力、バランスのテストを行い、彼らの成長を図っています。もちろん、これはアメフトやバスケットボールではもう基本となっている方法にインスピレーションを受けたクリンスマン監督が、サッカーに適応させたものです。

コンフェデ終了後、代表の選手ひとり一人に合わせたフィットネスプログラムが渡されたのです。それにその選手のフィットネスレベルを分析した結果の弱点も書かれています。この情報に基づいてリーグの所属チームに戻った時も普段のチーム全員のトレーニングに加えて、この特殊な運動もし、来年のW杯をピークコンディションで迎えるというものです。クリンスマン監督は十月に再びフィットネスチェックを行う際、前回より全員のレベルが上がっていなければ…と厳しく言います。彼が選手に期待しているレベルはブンデスリーガレベルじゃない。そのためには成長が必要、という事です。クリンスマン監督によると、クレスポ(Hernan Crespo)、マケレ(Claude Makele)やブラジルのエメルソン(Emerson)といったスーパースター選手に何が違うかというと、フィジカルだと言う。だから彼はフィジカルトレーニングを最も重視している。

またクリンスマン監督は、年明けに代表選手全員は歯医者さんの診察を受ける事を発表しています。これは歯周や口内の炎症による筋肉ダメージを起こす事を防ぐためです。これも厳しく決まった方法に従って行われます。

マネージメントの面でもクリンスマン監督は新しいポジションを取り入れています。管理やマネージメントをメインにした役割ですが、雇われたのはなんと1996ユーロの決勝戦のゴールデンゴールを入れたあの、オリバー・ビアホフ選手です。

他にも、クリンスマン監督は選手に“もっと自立しろ!”「be more independent」と呼びかけます。そういった成長をしてもらえるように、監督はサッカー以外の面でも日常生活に色々なプログラムを加えています。選手に“明日はどんな経験が出来るか楽しみ!”という刺激を与えてられているようです。外国語講座やコンピュータレッスンから選手のオリジナル ワークショップまで、そして遠く離れた国との親善試合も。去年のアジアツアーもその一つであり、「代表選手の視野を広げる」ためのものに違いありません。

またドイツ代表の新しい監督は、ローテーションシステムを取り入れ常に全員に機会を与えて競争させることが、成長や技術のレベルアップにいいと言います。モットーは“GoodからGreatへ”。

Klinsmann監督と同時にやってきた新人のパトリック・オボモエラ(ヴェルダー・ブレーメン)、バスチャン・シュバインスタイガー(Bastian Schweinsteiger)(バイエルン・ミュンヘン)とロベルト・フート(チェルシー)以外に今二人の若い選手が注目を浴びている。20歳のLukas Podolski(ルーカス・ポドルスキー)(FCケルン)とハノーファー 96でプレーするペル・メルテザッカー(Per Mertesacker)です。ポドルスキーはブンデスリーガ2部の得点王になってから、チームと共に1部にあがり、また代表では8試合に7点をいれる。クリンスマンが選手に望んでいるのは、楽しく、そしてある程度意識無く、自然にサッカーをプレーすることだそうです。この“遊び方”と言えばまさにポドルスキー選手です。彼はベテランのバラック(Michael Ballack)選手と共に今国際的にも認められてきている現代のドイツサッカーを代表するカリスマ的存在です。
ペル・メルテザッカーPer Mertesackerがドイツのコンフェデ ヒーローの一人になったのは優れた守備能力をはっきりと見せるためでしょう。これからもリーグチームでの活躍が楽しみです。そのレベルを保つ事が出来るのか…クリンスマン監督は彼に期待しています。コンフェデ全体を見るとクリンスマンの努力と戦術が大変効果的だったようです。そのポリシーの一つは若手選手をバラック(Ballack)、シュナイダー(Schneider)やフリンクス(Frings)のようなベテラン選手の側で使う事。
この経験をするによって、若い選手は成長が早い上、リーダーシップも覚え、ドイツ代表に欠かせない存在になっていくのです。若者のポドルスキー(Podolski)やシュバインシュタイガー(Schweinsteiger)の新鮮なフットボールで久しぶりにドイツ中のファンの心を掴むアイドルが生まれたのです。これもクリンスマンのお陰だという事はファンも分かっています。その証拠に、コンフェデのドイツ対メキシコ戦で10分以上“クリンスマン、クリンスマン”と歌いながら観客がスタンディングオベーションしたのです。

チケット関係の問題さえなければ、2006のW杯はとてもポジティブな期待が出来そうです。全64試合の3,200万チケットがすべて一般的に発売されたとしても、世界中のファンには足りません。実際のところ、チケットの大半数はスポンサー・参加国・ホストシティーやDFB-ファミリー(といわれるクラブや協会)に渡される。第一ネット発売期は2月1日から3月31日だったのですが、FIFAがその時に販売するチケット枚数はたった81万2千枚なのにも関わらず、予約の数はなんと1千万!申し込みされた方のなかから、サイトが使い難いやプライバシー面で不安だと言う方も少なくはない。それからは、サッカー試合のチケットを買うためにどちらのチームを応援するのか、からパスポート番号まで聞かれる必要が本当にあるのか、という疑問が出てきまして議論が始まりました。これに対してW杯組織員会の答えは、観客を守るために、既に知られているフーリガンがスタジアムに入場出来ないように、セキュリティーを大変厳しく守ることを重視しています、との事です。

ワールドカップのチケット一枚でも欲しくてたまらないというファンも無数いるのに、しかも今回は素晴らしい大会になりそうなのに、スタジアムに限りがあるため、みんなは入られない事が本当に残念ですが、是非皆さんもドイツのW杯を楽しみにしていて下さい。

Sebastian(セバスチャン)