細々と、だが連綿と受け継がれている伝統の「イ草栽培」

細々と、だが連綿と受け継がれている
伝統の「イ草栽培」

イ草の栽培を続ける

倉敷市周辺は、畳に使われる「イ草」の産地だ。といっても現在は需要が減り、中国産の安い畳にも押され、倉敷では栗坂、亀山、早島町のたった3ヵ所、それもわずか2ヘクタールで栽培されるのみになってしまった。

消え入るほどのこの状況のなかで、それでもイ草栽培を受け継いでいる1人が、栗坂正さんだ。岡山の気候・風土に合い、耐久性と弾力性にすぐれた品種「岡山3号」を減農薬有機肥料栽培で育てている。

日本の気候に適したイ草

イ草は内部がスポンジ状になっていて、これを「とうしん」という。部屋の湿度が高いときには、この「とうしん」に湿気を蓄え、乾燥しているときには水分を放出してくれる。
保温性が高いため、冬は暖かく、夏はひんやりとして、夏は蒸し暑く、冬は乾燥して底冷えがする日本の気候にはぴったりの植物なのだ。
さらに一説によれば、イ草の香りには森林浴と同じ効果があり、身体をリラックスさせたする機能があるのだという。

生活環境の変化に合わせて

倉敷の工芸品には、さまざまな色に染め上げたい草を手織り機で織る「花ござ」がある。現在では「イ草ラグ」という名称も使われているが、繊細な文様が編み込まれたラグは、和室だけでなく洋室にも似合う。日本の住居から畳が姿を消していくなかで、こうしたイ草のラグを生活に取り入れるのも、いいかもしれない。
ちなみに、倉敷近郊の「早島町花ござ手織り伝承館」では、火曜・金曜に花ござの手織り実演がおこなわれている。ぜひ一度、明治・大正時代からの織り機がいまも現役で動いているのを目にして欲しい。

ACCESS

イ草栽培・加工 栗坂正
岡山県倉敷市