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金属と釉薬が織り成す美「工芸家 古瀬静子」

金属と釉薬が織り成す美
「工芸家 古瀬静子」

DATA
工芸家 古瀬静子
山形県山形市

金属とガラス質の融合

これまでの旅の中で、さまざまな伝統工芸に出会ってきたが、今回はそのなかでも初めての訪問となる「七宝」。
七宝とは銀や銅などの素地にガラス質の釉薬を定着させ焼成した工芸品だ。釉薬をのせて焼くことによって、その釉薬が溶け出し、ガラスのように固まって艶やかな表情に彩られる。七宝の種類と技法は、素地や埴線の有無、釉薬の透明・不透明などから分類される。
もともとはシルクロードを通って中近東から中国にその製法が伝えられ、日本にわたってきた技術とされている。奈良正倉院には瑠璃鈿背十二稜鏡が存在する。明治時代には盛んに作られるようになり、海外への輸出も多かった。
現在では工芸品としての七宝と、家庭用の電気炉でも制作が可能な、趣味としての七宝装身具を作るファンもたくさんいる。

細かな作業が美しさのもと

中田がおじゃました工房でも、まず目がいったのは小さな電気炉。
「こんな小さいもの焼けるんですね」
「それがいいところなんですよ。でも陶芸と違って一度にたくさん焼けないし作品の大きさによって、炉の大きさも変えるので苦労もあるんですけどね」
そう答えてくれたのは、七宝作家の古瀬静子さん。日本工芸会にも参加する七宝作家であるほかに、立体の有線七宝教室を主宰し、東北芸術工科大学で非常勤講師も務める方だ。
工房に入るとずらりと作品が並ぶ。色鮮やか、そしてつるりとした表情がなんとも愛らしい作品ばかりだ。でも、釉薬のガラスのような質感が金属と相まって柔らかの中にもシャンとした高級感が漂う。七宝の魅力が詰まった作品だ。
先生ということもあってか、当日は作業工程がわかるように、製作過程のものを順番に置いて説明してくれた。そのなかで「これが一番大変な作業かもしれません」と古瀬さんがいうのが銀線を組む作業。下地の金属にデザインを描いて、そのとおりに糸のような銀を組んでいく作業だ。それほど大きなものではないので、デザインどおりに銀線を組むのは非常に繊細な作業。でもこれがずれてしまえば、釉薬が描く図柄もずれる。「一番大変」と言う意味がよくわかる。


釉薬が導き出す輝き

次に釉薬を置く作業。古瀬さんの作品を見て中田は「このさまざまな色はすべて釉薬ですよね。これを混ざらないように塗るというのがすごい」と言った。でも古瀬さんは釉薬を見せてくれて「塗るというより“置く”という感覚です」と言う。釉薬は液体というイメージだが、よく見るとちゃんと粒子が残っているので、七宝で釉薬を使う場合にはそれを置くという表現のほうが近いのだ。
ペンダントやブローチなど小さな作品の場合は、手元が少し狂えば失敗になってしまう。これもものすごく繊細な作業なのだ。その作業に苦しめられるとはこのとき中田も思っていなかったかもしれない。

そこで、中田も挑戦。古瀬さんが用意してくれたのは、丸、三角、四角、というシンプルなデザインをあしらったペンダントヘッド。デザインがシンプルだからといって侮ることなかれ。「何色がいいかな」とワクワクしていた中田も釉薬を手に取ると急に無口になり、手元に集中することに。そうしないとやはり作業ができないのだ。
何とか釉薬の作業が終わり、いざ焼入れ。数分後に取り出して、磨きを入れる。するとさっきまでとはまるで表情の違う、輝くような作品ができあがっていた。苦労が一気に吹き飛ぶ。七宝の美しい輝きのおかげだ。中田も満足気に「うれしいな」といって、胸の前に苦労のあとをぶらさげていた。

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