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漆の奥深さを知る「漆芸家 室瀬和美」

漆の奥深さを知る
「漆芸家 室瀬和美」

DATA
漆芸家 室瀬和美
東京都新宿区
http://murose.com/

”どこまで見せるか”という技術

お話を伺ったのは、漆工芸のなかでも蒔絵の分野で重要無形文化財保持者に認定されている室瀬和美さん。室瀬さんが得意とするのは「研出蒔絵」という技法。漆地の上に漆で文様を描き、固まらないうちに金銀粉や色乾漆粉などを蒔き付ける。漆が固まったあとに、再度漆を塗り、硬化させたあとに研ぎ、磨きを入れて、最初に描いた文様や金銀粉などを表に出す。つまり何層にも金と漆を重ね、そこからどこまで研ぎ上げるかということが大切になってくる。 室瀬さんはその研ぎの工程で図柄に立体感をもたせた作品を作りだす。
拝見したのは、海老が泳ぐ姿を蒔絵で描いた箱だ。金粉をたくさん見せて強い金の色を出すところと、沈んだ漆の飴色がかかった金の色にするところを使い分けて濃淡を出し、生き生きとした立体感が生まれていた。 その引き込まれるような奥深い色合いに、「漆と金の色、どちらもすごくきれい」と中田。「昔の蒔絵は平面的な仕上がりが多かった。こういう濃淡を出す表現は現代の感覚ですね。」そう室瀬さんは語る。

表現の幅広さが日本の特徴

中田がこの旅の趣旨を室瀬さんに説明し「日本は伝統工芸と呼ばれるジャンルで腕を振るう人も、アートで頑張っている人もたくさんいる。だから自然と訪問する先も増えてしまうんです」と話すと、「それが日本の特徴」と室瀬さんは言う。
「日本は、漆の文化にしても日用品からアートまでジャンルの幅が広い。それにどちらも非常に仕事が繊細。だからこそ面白いものがたくさん生まれてくるんですよ。神社などに奉納するようなものから日常のもの、あらゆる器がなければ人間の感情の起伏を表現できないと思うんです」と室瀬さんは話してくれた。

また、室瀬さんは過去の技法の研究や文化財の修復も行なっている。なかには、現在には伝わっていない技術が修理の過程で発見されることも多い。なぜ文化財の研究を始めたのかと聞くと、学生時代の恩師に勧められたからだという。
「自分の作った作品が傷んでしまって、300年、400年前の人もきっと残念がっているはずだから直してあげなさいと言われたんです。確かに自分が作ったものも傷んでしまったら直したい。直せなかったら残念だなあと。今にして先生の言葉の意味がよくわかるような気がします」
過去の作品に触れながら、技術や心を学ぶ。そのうえで現代において、現代にあった感覚で、新たな蒔絵の表現を作り出していく。そうやって、室瀬さんの作品はできあがるのだ。


漆器でご飯をいただく

「わんっていう言葉があるでしょ」と室瀬さんが言う。
「お茶碗の”わん”ですか?」
「そう。お茶碗っていうときは石偏の漢字で碗。磁器や陶器だからね。熱いお茶を入れるから、すぐに冷めて飲みごろになるように陶磁器が適している」
「そうか、ご飯を入れるお椀は木偏だ」
「そうなんです。昔、ご飯は木の器で食べていたんです。だから、飯椀という字は木偏なんですね。木の器だと、陶磁器とは逆に、時間がたっても冷めないし、漆が塗ってあると蒸れないんです。だからゆっくり食べても、温かいご飯がそのまま、おいしいままなんですよ」
確かに、現在は陶磁器のお碗でご飯を食べることが多いが、木のほうが適しているのだ。
「ぜひ、一度、木の器、しかも漆塗りの飯椀でご飯を食べてもらいたい。ゆっくり食べても美味しいから、会話も弾むと思いますよ」と室瀬さんは言う。素材の特徴というと、すぐにでも考えがおよびそうだが、これは意外にも盲点だった。歴史が育んだ文化の奥深さには驚かされるばかりだ。

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