2009.09.18
鳥取日記
島根県から9号線をひたすら東へ走ると、そこは次の目的地である鳥取県。
この国道9号線、実は京都市から山口の下関市まで通じているらしく、本州に入ってからの僕らの旅では馴染みの道となっている。 ただ、移動の連続であるこの旅、高速道路があるのと、ないのではスケジュールに大きな差が生まれるのだけど、島根、鳥取の両県には東西に走る高速道路がほとんどない。
僕は移動に大変な時間がかかるんじゃないかと少し心配だった。 しかしどうだろう、驚く事にこの9号線の信号はほとんどが黄色の点滅信号だ。 そのためスイスイスイ、と車が流れる。 もちろん制限速度は守りつつも、全くストレスを感じる事なく運転できたのだ。しかも海沿いに続く9号線、所々ではあるが左の窓の先には圧倒的な青さの日本海が絶景となって映し出される。 前を見て運転しなければ、と注意しつつも、僕は度々それに目を奪われた。
最初の目的地は21世紀梨で有名な福田農園。 梨と言えばヒデさんの大好物。最初の行き先に決定したのも頷ける。 ここでもお話を聞きながら梨を頂く僕ら。ほのぼのとした、旅のはじまりに相応しい雰囲気だった。
次は福田養蜂所へ。 向かう途中、僕は一人で不安になっていた。
「養蜂所というくらいなので、蜂いっぱいいますよね?刺されませんかね・・?」 そういう僕に今回から同行している小堺ディレクターは、「蜂蜜は好きだけど蜂はねぇ・・。まぁけど大丈夫じゃない?」と、あまり気にしてない様子・・。 ヒデさんは黙々とパソコンに向かっている・・。
到着し、まずは蜂蜜を試食させて頂く。蜂蜜を食べ比べた事がないというヒデさんが、「美味い?」と僕らに訊く。 「はい、実に美味いです。」 と目を見開く僕らスタッフ。 僕はコーヒーには砂糖ではなく蜂蜜を入れるのだけど、いつも使う蜂蜜と格段に違うのがわかる。舐めても鼻に来るような強い甘みがなく、非常に上品だ。
試食もそこそこに、早速蜂を見に現場へ。テレビなどでよく見る、例の木箱が並んでいる・・。
徐々に近づくと、あの羽の音が大きくなる。気付けば回りを大量の蜂が飛んでいる・・。 ビビる僕・・とにかくすごい数が飛んでいる・・。 テレビでは見た事あるけれど、生で見ると結構な迫力だ・・。 ブンブン飛んでいる。もう、ブンブン飛んでいるのだ。当たり前だけど、蜂は本当にブンブン言って飛ぶのだなこれが。
ヒデさんは板に作られた巣に触れたりしている。怖くないのだろうか・・。

蜂が怖くて早くその場を離れたくてソワソワしている僕の目の前を、明らかにミツバチのサイズでない蜂が飛んでいる。
ホバリングしながら、こちらを向いている。大きい。素人の僕が見ても明らかにミツバチではないではないか・・。お尻がもう、なんというか、アメリカンサイズだ。 黄色と黒のシマシマが、ミツバチとはかけ離れてグロテスクだ。 恐る恐る、隣にいた従業員の方に小声で聞いた。
「あの・・そこでホバリングしている大きいのって・・?」 「あ、これはデカイですねぇ。スズメバチかなんかですかね?ハハハ、たまにいますよ。」 スズメバチ・・スズメみたいに、全然かわいくないじゃない・・。
翌日、島根で知り合った方より「是非行って欲しいです!」と薦められて行って来たのが「大江ノ郷自然牧場」。
こちらではまず養鶏場へ。鶏がわんさかいる所へ入るため、作業着(ツナギ)を貸して頂く。しかもこれが格好良い。「今後も色々体験とか、山や川も行くから、こういうツナギいいね。作ろうかな。」 とヒデさん。実際に後日、知り合いのアパレルブランドさんから特注で作ってもらっていた・・。
入念な消毒をしてから、いざ鶏たちのもとへ。 いるいる、無数の鶏がコッココッコ言いながら小刻みに頭を前後させて歩き回っている。 みんなが僕らに寄ってくる。餌だと思われてるいのか、餌をくれると思われてるのかわからないが、ヒデさんは既に100羽近くに囲まれてゴム長靴をツンツンと突かれている。

その後はここで生産された卵やそれを使ったスィーツを楽しめるカフェ、「cocogarden」へ。
通りから少し脇に入って緩やかな丘を登ると、山をバックにしたお洒落な外観が目を引く。 甘いものが大好きなヒデさんが、取り敢えずお薦めのプリンとシュークリームを頂く。 「美味い!」 といきなりシュークリームを頬張ったまま声を上げるヒデさん。 僕も食べてみる。確かに美味い・・。
これ、釜出しパイシューと言って外はパリパリしていて中のクリームとのギャップがたまらない。あと言い出すとキリがなくなるが、プリンもプリンで生クリームたっぷりで美味かった。オーナーの小原さんと美しい山の景色を見ながら話しているヒデさんの背後にまわった僕はもう、テーブルにカメラを置いて撮影そっちのけでガッツリ食べさせて頂いた。

また、そこで天美卵を購入した僕ら。前出の、ここをご紹介頂いた方からもお薦めされていた「卵かけご飯」を後で食べるためだ。早速その夜、旅館でご飯を注文し、卵をかけて食べてみる。
僕はそれまであまり食べた事がなかったのだけど、「なんで今まで食べなかったんだろう・・」とこれまでを後悔するほどに美味しいではないか。 「ウ、ウマいじゃないか卵かけご飯!」 その日から、僕は買った卵がなくなるまで、朝、夜とこの卵かけご飯にハマったのだった。
鳥取といえば鳥取砂丘に触れないわけにはいかないだろう。 砂丘に着いてまずはハンググライダーのショート体験をした後、ヒデさんが海の方を見ながらポツリと言う。
「海際まで行ってみようか。5分くらいで行けるだろ。」 砂丘は広いが、確かに5分くらいで行けるように思えた。 歩き出して2、3分経つと、足腰がキツくなり出した。砂が深いのである程度は覚悟していたのだけど、30過ぎで運動不足で夜のビールをこよなく愛するこの僕には、想像以上にキツいウォーキングとなった。
当然、現役時代と変わらぬ体をしているヒデさんとの距離がどんどん開く・・。まるで本当の砂漠のように幾つかの起伏もあり、目の前の砂の坂は絶望的ですらある。

5分かからないだろうと踏んでいた海辺は一向に遠いままで、10分を過ぎてようやく波の音が聞こえてきた。 じゅうぶんに海を見た後、方向だけ間違わないように気をつけて戻る僕ら。
起伏を登りきったヒデさんが、急に走り出した。嬉々とした表情で走りながら砂の坂を下る彼を見て違和感をおぼえた。思えば、4年前までは彼が走る姿なんて日常でしかなかった。深い砂の上をバランスよく、以前と変わらぬ美しいフォームで走っているヒデさん。
彼の体は、ピッチ上か否かにかかわらず、体を躍動させる事に飢えているように見えた。それは、走る彼の表情を見れば一目瞭然であったのだ。
次は、岡山へと南下する。