2009.08.04

大分日記

大分県へ入る。日本の街と街は密接に隣合わせている為、標識がないとどこから別の県になるのか全くわからない。
ここではまず、湯布院へ向かった。 有名な温泉街という事で僕らの期待も膨らむ。 午後の街は土曜という事もあり、多くの観光客で賑わっていた。 驚く事に、日本人よりアジア系の人が多い。しかも若い。 街散策が大好きなヒデさんは宿に荷物を置くなり街へ。
 
多くの観光客が気になるスタッフ・・。 1人、また1人と彼に気付く通行人・・。ヒデさんに気付いた何人かが、僕らの後ろをついてきてしまっている。1人、また1人とその人数は増えて行く・・。 全く散策気分になれない僕らを振り返り、ヒデさんが言った。
 
「コロッケ食いたくね?」 まさに、「は?」の状態で目を丸くする僕らスタッフ。
「コ、コロッケですか?は、はぁ・・。けど・・沢山人がついて来ちゃってますね・・。」と声が上ずる僕。
「いや、この金賞コロッケってのがウマいらしいんだよ。食べようよ。」 「頂きます。」と声を揃えるスタッフ・・。
 
感想から言えば、僕らを囲むようにしてヒデさんを見ている人たちや、それまでの気苦労を完全に忘れてしまうほどに美味しいコロッケだった。 何が違うのか詳しい説明が非常に難しいのだけど、とても熱く、ホクホクしていて、とにかくとても美味しいコロッケだった、というのが僕の表現力の限界です。
 
ここ大分でも農家さんを訪問。まずは牛舎を見学へ。
その牛舎の入り口に繋がれていたダルメシアン犬の「タマ」。 僕らが近づいても表情ひとつ変える事なくこちらをじーっと観察している。 とても人なつこく、取材中もヒデさんはじめ、一人一人の匂いをしきりに嗅いでいた。ヒデさん達が立ち去ったあと、残って牛たちの実景を真面目に撮影していた同行プロデューサーの渡邉氏。
 
なるほどさすが数々の現場を経験して来たその後ろ姿は妙に様になっている。 そしてその足下で彼の足からお尻あたりにかけてを首を上下させながらクンクンと嗅ぐタマ・・。
「渡邉さん、そろそろ行きましょう。」 と声をかけ、彼が「よしっ。行きましょか。」と背を向けたその瞬間・・事件は起きた。
 
「ワォン!」という鳴き声とともに、タマが渡邉氏の尻に「マジ」で噛み付いたのである。
「あぁぁ!」という悲鳴と共にカラダをエビのように反らせてこちらに飛び跳ねて来る34歳の渡邉氏!そして何事もなかったかのようにクルッと尻を向けてスタスタと小屋へ引き返すタマ。
 
顔を真っ赤にして動揺を抑えきれない渡邉氏が、ジーンズの尻の部分に空いた小さな穴をしきりに見ながら「ち、血ぃ出てませんか!?」と腹を抱えて笑っている僕に訊く。僕は幼い時に犬に噛まれた事はあるけれど、人が犬に噛まれる場面に遭遇したのは実に初めてだった。
悲鳴をあげる渡邉氏の後ろを引き返す、あのタマの後ろ姿が今でも忘れられない・・。
 

 
その後、竹細工職人を訪ねてBAICAへ。 細長く裁断された竹を起用に織るヒデさん。
ここでもスジがいい、と褒められる。 途中で少しだけ指先を切ってしまい、血が出るハプニングもあったのだけど、完成した後に「血染め竹細工の出来上がり!」、と自慢気にネタにして喜んでいた。熱心である・・。
 

 
大分では旅で初となる大学(APU:Asia Pacific University)を訪問。 ここの学長であるカセム氏とヒデさんは、お互いが観光庁のアドバイザリー・ボードメンバーという事で以前からの顔見知りなのだ。
 
ここでものすごく印象深い場面に遭遇した。 校内を歩くヒデさんに1人の女の子が駆け寄り、質問をした。
 
「夢を実現する為には、夢を持つ事の他に何が必要だと思いますか??」
 
その子のあまりに眩しい若さと、希望に満ち溢れた瞳に心打たれ、我を反省している僕をよそに、ヒデさんが間髪入れずにこう答えた。 「継続です。」 僕は思った。
彼がこれまでサッカー選手として収めて来た功績その全てが、この一言に凝縮されているのだな、と。 そしてきっと、彼自身が一度も疑う事なくそう信じて来たのだろう、と。
 

次は佐賀へと向かう。
 

■Staff Profile
日本全国47都道府県の旅で、現場マネージャー兼、カメラマン兼、ドライバーを担当。
10代でサッカーをするために単身ブラジルへ渡った経歴の持ち主で、
ポルトガル語・英語・フランス語を話す。