2011.08.08

山梨日記 中編1

久遠寺の後で「雨畑硯の雨宮彌太郎さん」を訪ねたあと、和紙製品を扱っている「株式会社大直の一瀬美教さん」を訪ねた。
トートやリュックなどのバッグ類、スリッパ、帽子などの、和紙を使ったどこか優しい感じの、見た事もないようなプロダクトが並ぶ。驚きの連続で、和紙に興味津々のヒデさんも一瀬さんをずっと質問攻めだ。

 

 

この市川という土地の紙は昔から京都で使われているそうで、一瀬さんも「紙には自信があります。」と力強く語る。
最後に、一瀬さんが「是非御茶を飲んで行って下さい」という事で、二階にあるお茶室へ。
座敷に正座すると、背筋が伸びて、心が落ち着く。所作をよく知らないので、ヒデさんの真似をする僕。その空間があまりに心地よくて、ちょっと御茶を勉強してみようかな、という気にさせられた。

 

 

それから「萬屋醸造店さん」に寄り、北杜市明野にある「ミサワワイナリーさん」へ。
ここ明野町は日照時間が日本一長いとの事、山もあって涼しい気候のこの辺りなので、少し意外な気もした。
ここでは三澤彩奈さんにブドウ畑などをご案内頂く。
三澤さんは幼い頃よりワイン造りに親しまれていて、フランスはボルドー大学のワイン醸造学部にて学び、その後は南アフリカにも留学されて、ワインにおける主要国でワイン造りを学ばれたとの事。その経歴とは裏腹に、その語り口はとても柔らかく、ワインに対する謙虚で真摯な姿勢がお話の中から汲み取る事が出来た。
最近は日本酒ばかり飲む姿の多いヒデさんだけど、元々はかなりのワイン通だ。ここでも気持ちの良いブドウ畑を歩きながら、僕らにはあまりわからないようなワインの深い話で盛り上がっていた。

 

 

ふとした話の流れから、ヒデさんが僕らに質問した。
「さて、黒ブドウから白ワインは造れるでしょうか?造れないでしょうか?」
不意打ちとはこの事だ。
安易にバカを晒してはいけないと思い、牧へ答えを促そうとした矢先に牧がこっちを見ながら自然と「なんでっすか?」と聞いて来た…。この辺りの牧の瞬発力は成長著しい。
よくわからないので「造れません。」というと、「ブー、造れるよ。」とヒデさん。なんとなく嬉しそうなのが悔しい…。
「黒ブドウも、皮を剥いたら白いだろ。けど、白から赤は造れないけどね。」
との事。勉強になりました。

 

その日はそれで終了したのだけど、夜、食事をした後に「ほったらかし温泉」という、絶景を誇る温泉へ。この日から合流していたカメラマンの高橋さんとライターの川上さんもテンションが上がっている。
この夜は「あっちの湯」へ。入ってみると、お風呂の先には確かに日本一の絶景露天風呂と謳われるだけのものが広がっていた。大声を出したい衝動を抑える。横では四十代のおじさん2人が並んで裸に笑顔で星空を見上げるという素敵な光景が。
いつまでもゆっくり入っていたいと思えるほど、素晴らしい露天風呂だった。

 

3日目、まずはぶどう寺と呼ばれる大善寺へ。
到着し、先に車を降りていたヒデさん達を追いかけると、何やら親しげな雰囲気が。牧に「どうしたの?」と聞くと、偶然にもこちらの僧侶の方が、ヒデさんの高校の同級生だったのだ。
色々と思い出すまで少し戸惑い気味のヒデさんだったけど、それも無理はないのかも知れない。ヒデさん曰く、高校時代は代表の遠征に参加する事も多く、その上勉強もしなければならなかったからあまりサッカー以外の事を覚えていないらしい。勉強以外の事しか覚えてない僕とは、当たり前だけど、えらい違いだ。

 

それから昨夜行ったほったらかし温泉の「こっちの湯」にて朝の絶景露天風呂を堪能し、僕らは山梨市のトウモロコシを作っている「やさい畑雨宮農園の雨宮さん」を訪ねた。
雨宮さんが作るのはピュアホワイトという、とても栽培の難しい品種。真っ白な実と強い甘みが最大の特徴との事。
元々は養蚕農家だったという雨宮さん、「採りたては焼くよりも生食」というピュアホワイトなだけに、「農薬はなるべく使いたくない」と話す。
糖度が17度から18度もあるというので、メロンとおなじくらいの甘さだ。

 

黄色い花粉がかかってしまうとトウモロコシも黄色くなってしまう為、周囲の方には黄色いトウモロコシを作らないようお願いされたとの事。
「お願いするだけでは納得してもらえませんので、種を分けさせて頂いたりしました」
実際にトウモロコシをもいで試食させて頂く。確かに甘くて、止まらなくなる。
「これでコーンスープ作ったら美味そうだなー」とヒデさんも興奮している。すると続けてヒデさんが何かを思い出したように質問した。
「トウモロコシって…野菜ですか??」
一瞬の沈黙の後、雨宮さんが呟いた。
「野菜です…。」

 

ヒデさんだって、食べられる野菜があるのだ。

 

 

次の訪問地は「甲州ワイン豚の晦日牧場さん」。
代表の晦日正一さん、顔に歴史を物語るような年輪が深く刻まれていて、ハリウッドの大物俳優と比べても遜色のないような方。
ワイン豚は晦日さんが研究を重ねて開発されたという。以前、体調が弱った子豚にワインを飲ませたら元気になって、風邪も引きにくく、更には肉もまろやかになった事から研究をスタートされたという。「豚にワイン」という冗談のような発想が素晴らしい。
晦日さんがヒデさんに解り易く説明をされる。その姿を見て、単純に、こうして若い人に自分の生業を同じ目線で話せる人っていいなと思えた。もう70才は超えていると思われる晦日さんだけど、「僕に定年はないです。日々学んでます。」との言葉に、自らを大反省させられた…。

 

実際に豚にワインを飲ませる所を見せて頂いて驚く。ボトルでそのまま飲ませるのだけど、もう、ガブ飲みだ。ヒデさんも楽しそうに飲ませてみる。僕はその横で、「果たして豚も二日酔いとかするのかな…」と不安になっていた。

 

 

■Staff Profile
日本全国47都道府県の旅で、現場マネージャー兼、カメラマン兼、ドライバーを担当。
10代でサッカーをするために単身ブラジルへ渡った経歴の持ち主で、
ポルトガル語・英語・フランス語を話す。