2010.06.24
HIDE’S REPORT Vol.2 「オランダ戦後」
オランダ戦後
ホテルの窓から見えるビーチと真っ青なインド洋。ダーバンは海沿いの美しい町だ。そのビーチから程無い距離に、ワールドカップのための作られたサッカー専用スタジアムは、巨大なアーチが特徴的で6万人以上が入る。
試合開始前から、オレンジ色のユニフォームを着た大応援団がスタンドを埋め尽くす。オランダ系の移民が多い南アフリカは、オランダにとってはまるでホームグラウンドのような場所だった。特にこのダーバンにはオランダ系の人々が多いらしく、試合が始まるころには、スタジアムはほぼ満員の状態になっていた。
カメルーン戦、初戦の勝利という最高の結果を得た試合だった。が、その結果とは裏腹に、内容に関して言えば、収穫がほとんどないい試合だった。何よりも“攻撃の形“というものがまったく見えず、カメルーンの出来の悪さがあったうえでの言うなれば守り勝ち。
ただそれでも、本番前の練習試合の連敗で、ともすれば空中分解さえしかねない状態に陥っていた日本代表が、この試合に勝ったことで、自信を取り戻し、チームとしての結束もまとまったのは間違いないだろう。この勝利でやっとワールドカップで戦える状態になったのではないかと思う。だからこそ今回のオランダ戦は、結果はともかくここで日本代表が“どう戦うか”という部分に注目していた。
前半、日本は相手の攻撃を受ける形から試合に入った。しかし、カメルーン戦で相手の攻撃を無失点でしのぎきったことが自信になったのだろう。非常に安定した守りで、危なげない戦いを見せる。相手が攻撃するスペースを素早く消し、入ってきたボールに対して数人で囲み込む。相手がボールを支配する時間が長くても、我慢強く前半をしのぎきった。
ただ、その代償として、攻撃に関しては、まったくと言って良いほど形を作れなかった。松井選手や大久保選手といった好調な選手達が相手のボールを追うために体力を裂かれてしまう。これは日本にとっては大きなマイナスだった。また、彼等が良い突破を見せても、周りにフォローする選手がいないだけに、攻撃に厚みが出なかった。
後半、早いうちに失点したこともあり、やっと日本も攻撃へと転じた。しかし、カメルーン戦でも問題だった、攻撃の形は見えなかった。松井選手や大久保選手などの個人技からの崩しがあったり、後半終盤に入ってから闘莉王選手が前線に上がって行ってのパワープレーによるチャンスは多少あった。しかし、日本が意図した崩し、またはダイレクトプレーによる崩しなど、先の可能姓を見せる攻撃は皆無だった。
中村俊輔選手、玉田選手、岡崎選手を次々と投入し、一見より攻撃的な布陣になったように見えたが、実際は選手が変わっただけで、システムは前半と変わっていなかった。ならば、何故好調な松井選手や大久保選手をあの時点で交代させるのだろう? 岡田監督の采配の意図がなかなか読めないし、迷っている様にも思える。
0対1という僅差で試合が終わったのは、オランダ側にも原因があった。攻撃は単調で工夫が感じられず、内容はあまり良くない。先日、AC ミランのクラレンス・セードルフに会った時、彼はオランダのチームのことを、「前線にクリエイティブな選手がいない」と評していたが、その理由が分かった気がした。
0対1の敗戦というスコアだけみれば、強豪相手の善戦、あるいは惜敗という言い方も可能だろう。確かにカメルーン戦に比べて、さらにチームのまとまりが感じられたし、ディフェンス面での連携はさらによくなっていた。特に阿部選手は、しっかりとしたプレスと細やかなフォローで日本の守備全体のバランスをとる素晴らしい役割を果たしていたと思う。
しかし、今日の日本にとって大事なのは何だったのだろうか? オランダ相手に善戦すること? いや、違うだろう。4度目のW杯の舞台、日本は強豪国と呼ばれるチームと良い試合をやることが目標ではないはず。
過去3大会で日本が積み重ねた得点は8。そのうち2002年度の大会では5得点をとり、チームはベスト16へと進んだ。そこからも分かるとおりに、W杯で勝ち進む為には得点を入れなければならない。だからこそ、このオランダ戦は1対0で勝つような試合をするのではなく、負けてもいいから3対4くらいのスコアになる試合を見たかった。
日本はもっとチャレンジをするべきだったのではないだろうか? 正直、今日のオランダ相手ならば、十分勝つことも可能だったはず。守備の安定感では日本の方が上だったとすら思う。今日の試合、もし0対0で最後の局面を迎えていたら、闘莉王選手を前線に押し上げ、パワープレーを行っていただうか?
4度目のW杯。善戦をするために参加してるわけではない。当たり前のことだが、サッカーは点を取らなければ勝つことはない。そんな、日本の未来につながる様なサッカーを次のデンマーク戦で見せて欲しいと思う。
それがきっとその先の決勝トーナメントの扉が開いてくれるはずだ……。