2010.10.23

愛知日記 前編

北陸から岐阜を経て南下してきた僕らは愛知県へ。
もう10月も半ばだというのに、まだまだ半袖でも大丈夫だった。

 

名古屋に入ってまずはひつまぶしを食べに「うな富士」へ。
名古屋と言えば…と言われるくらいに有名だというけれど、僕は正直それがどういう料理なのかさえ知らなかった。
ヒデさんに聞いてみると、「多分俺も初めてかも…」と曖昧な返事が返ってきた。
お店に入って初めて「あ、鰻屋さんなんだ…」と知った僕。料理が出て来て、食べ方に一瞬困りつつも、「こうして食べるんじゃないの?」などと試しながら美味しく頂いた。
後でヒデさんが調べた所、そのまま食べる、薬味をのせて食べる、最後にお茶を足してお茶漬けのようにして食べるという3種類の食べ方で順番に食べるとの事だった。また1つ、勉強になった気がした。

 

その後、名古屋市を出た僕らは東へ30km走って瀬戸市へ。陶芸家である加藤春鼎(しゅんてい)さんを訪問。
ご自宅の離れのような和室にてお話を伺う。この和室の前には池があったのだけど、「鯉がこないだまでいたのですが…アライグマに全部やられました…。」との事…。
瀬戸市は岐阜と接しているのだけど、まさか愛知県でも動物ネタが出て来るとは想像もしなかった。
部屋の周りには幾つもの作品が棚や床に不規則に並べられている。長い伝統により受け継がれた巧みな技術による作品だからなのか、僕の目にはその不規則な配列さえ美しく見えた。

 

 

体験では、ヒデさんもこれまであまり試した事のない、土練りを教わる。これまで僕らも何度も見た事はあったのだけど、ただ粘土をコネコネしているだけのように見えるこの作業、実は2通りの練り方があるとかで、それぞれ粘土の固さを均一にする為のものと、粘土から空気を抜く為のものとがあるらしい。
ヒデさんも加藤さんを真似て黙々と土を練る。

 

 

僕はその間、少しだけ工房の屋上に出て山を見ていたのだけど、所々が色づいているその景色に、気付けばもう秋なんだなぁと感じさせられた。
な。

 

 

それから今度は南へ60km、碧南市にある“みりん”の醸造元である「角谷文治朗商店」さんへ。
愛知県東部の三河地方は、200年以上も前からみりんの醸造が盛んに行われて来た土地らしく、現在でもみりん業者数は全国で最も多いらしい。みりんと言えば岐阜で初めて行って、無知な僕はそれが元々はお酒であるというのですごく驚いたのだけど、ここでも社長の角谷利夫さんより興味深い話を聞く事となった。
「三河、尾張は大地が豊ですから、そこで穫れるものを美味しく食す為に酒造り(みりんやお酢を含む)が盛んになったのです。」
との事で、やはりこの辺りでは信長や家康や秀吉が出た土地が近いからか、訪問先の方から歴史にちなんだお話を聞く事も多い。ヒデさんも近頃勉強でもしているのか、信長と斎藤道三の関係についてなどスラスラと語っているのには驚いた。

 

 

2日目、早朝から「伊賀八幡宮」さん、「大樹寺」とまわってから、岡崎市にある「八丁味噌 カクキュー」さんへ。
味噌桶を保温するなどすれば熟成が速まり、早く味噌を造る事も出来るらしいのだけど、こちらは自然による温度管理と添加物なしで約2年に渡って熟成させる「天然醸造」により、その土地独特の味を引き出しているとの事。
良質の大豆と食塩と水を原料とする八丁味噌は、今では栄養食品として海外でも広く話題になっているとの事なのだけど、近い将来日本人以外が普通に朝からコーヒーカップで「ミソスープ」を飲むような時代が来るのかな…と想像してみた。
蔵にある味噌桶には、川石が山のように積まれて重石として使われているのだけど、その迫力がすごい。

 

 

そこを出た僕らは再び瀬戸市へ。陶芸家の「加藤作助」さんを訪問した。展示室のようなお部屋に並ぶ黄色と緑を基調とした作品たち。ふと、気になる作品を見つけた僕は、手に取ってみたい、という衝動にかられた。
「あぁ、旅を始めた頃は陶器を手にとりたいだなんて、全く思った事なかった気がするな。」と以前の自分を思い出し、出発点だった九州や中国地方をもう一度まわりたいと思った。
その展示室からは、とても珍しい黄瀬戸瓦の屋根が覗いていた。

 

 

瀬戸市を出て、名古屋市内へ。味噌煮込みうどんを食べに「山本屋本店」へ。3人で3つ頼んだのだけど、結構なボリュームだ。ヒデさんは基本的にあまり食べないので、だいたいは半分くらいを牧か大島のディレクターチームが食べる。そのせいか、旅を始めてから大島は太った気がする…。
ツルツルとうどんを食べてからのヒデさんの第一声、「ん?あれ…これまだ芯が残ってる…?」
……。どういう事ですか?と聞くと、つまり麺がまだじゅうぶん茹でられておらず、少しかたいのではないかという事だった。
ヒデさんが箸で麺をつまんで僕らに見せる。麺はヘッドフォンのように半円を描いて垂れているではないか。
席を立ったついでにこっそりと店員さんに聞いてみる。
「すみません、こちらの麺は非常に歯ごたえがあるのですが、そういう“こだわり”があるのでしょうか?」
すると店員さんは笑顔で「はい、そうです!」と答えてくれたのだった。

 

 
愛知中編へ続く

■Staff Profile
日本全国47都道府県の旅で、現場マネージャー兼、カメラマン兼、ドライバーを担当。
10代でサッカーをするために単身ブラジルへ渡った経歴の持ち主で、
ポルトガル語・英語・フランス語を話す。