2010.01.27
徳島日記
四国に突入した旅も、もう3県目となる徳島へ。
初日、まずは徳島県果樹研究所へ。
ここでは、全国で9割以上のシェアを誇り、徳島県の代名詞と言っても過言ではない「すだち」についてのお話を伺う。
まずは事務所にて色々な説明が始まる。すだちとカボスの違いなど僕は考えた事もなかったのだけど、カボスの方がすだちより大きいとか、それぞれ酸味はあるけど微妙な味の違いがあるとか、色々と教えてくれた。
帰りにビニールいっぱいのすだちを頂いた僕ら。とてもすごい量だったのだけど、後で調べたら東京では高級食材として使われているらしい・・。

その後は佐那河内村のイチゴ農家である谷渕さんを訪問。
僕は17歳までイチゴがダメだった。その見かけに反する意外な酸味が、せっかく美人なビジュアルをダメにしている気がしたのだ。僕の中では、完全に味が見た目に負けていたのである。
しかし谷渕さんはじめ、ここ佐那河内でつくられるこの「ももいちご」は驚くほどに甘いとの事。
しかも驚くべきは味だけでなくそのサイズ。大きいものになると拳大のものもあるという。
ヒデさんは梨同様にイチゴが大好き。特に練乳をかけて食べるのがめちゃくちゃ好きらしい。
ただここで、谷渕さんがいう。
「このイチゴを食べる上で、練乳なんか絶対にかけないで食べて欲しいです。それは食べてくれたら理由がわかりますから!」
実をもいで、実際に食べてみる・・かぶりついて果汁がしたたる。自然と頬が緩む。
「美味しい・・こんなにも、こんなにも見た目負けしないイチゴってあったんだ・・」
と目を閉じて感動する僕。
ウマいウマいといちごにかぶりついている僕と牧にヒデさんが嬉しそうにいう。
「ウマいよな?いやこれすごいよ。」
これは食べてみないと僕らの感動はわからないかもしれない・・。
ただこのももいちご、地元以外では今でも1個で1000円を超えるような値段がつくのだけど、最高値は12個入で2万5000円もしたらしい・・。
まだまだ日本には僕らが知らずに過ごしている「逸品」が沢山ありそうだ。

その後は宿へ移動。祖谷(いや)に着いたのは日も暮れかけた夕刻だったのだけど、日が暮れる前に宿の近くにある日本三奇橋の一つである「かずら橋」へ。
これ、長さが45m、幅2m、高さが14mもあるのだけど、橋の入り口へ立って初めてわかるのは、丸太や割り木などで編まれただけの橋床から、真下を流れるキレイな川の水が難なく見えるほどに木と木の隙間が空いているのである。CDが1枚、横にしたまま落とせるくらいだ。
ヒデさんと牧も渡ったという事で、僕も頑張って渡ってみた。橋の半ば頃まで来てふっと顔を上げると、その先で待つ彼らがなぜか大笑いしていた。
恐怖を煽らぬため下を見ないようにしつつ、滑らないように恐る恐る踏み出す一歩を大事にするあまり、自分がどのようなへっぴり腰で手すりに捕まりながらその橋を渡っていたかなど、その時の僕には知る由もなかったのだ・・。
その後橋の下まで降りてみたのだけど、ここはまさに秘境とも言える場所だった。川を流れる水の音と、喋っているのか誰かを呼んでいるのか見当もつかない鳥の鳴き声だけの場所。ヒデさんはじめ、牧も僕も、それぞれに数分間を黙って楽しんだ。

夜は宿泊先の「祖谷美人」さんのご配慮で、祖谷そば打ちをヒデさんが体験させてもらえる事に。
久留米でパンを作った時の要領でヒデさんは器用にそば粉をこねる。そば粉に加える水の量が重要らしい。そのまま夕食でそのそばを出して頂いたのだけど、やはりというか、農家さんで食べるご飯が美味しいように、材料作りから見ていると、そばの味も格段に美味しく感じるのだ。

翌日はLED(発光ダイオード)で有名な日亜化学工業さんを訪問。
非常にすごい技術らしい事はわかっていたのだけど、詳しい事は知らなかった僕。話によると、従来の電球と比べてCO2の排出量が少なくて長寿命、しかも有害物質を含まず低発熱で安全・・との事。
大きな工場を可能な範囲で案内して頂いたのだけど、話がやはり、難しい・・。
僕は最初の5分ほどでもう何がなんだかわからなくなっていたので、工場内で働く人たちの人間観察をする事にした。ヒデさんは頷きながら話を聞いて、時に質問をしたりしている・・話の内容がわかってるとしたら、すごいのだけど・・多分少なからず予習をしてきたに違いない。
このLED、主に目につく所では、信号機がどんどんそれを採用したものになって来ているらしいのだが、「徳島ではもう結構LEDのものに替わってるんですか?」というヒデさんの問いに、「いえ、実は徳島はまだまだで、一番採り入れてるのは東京なんです。」という驚きの答えが。
確かに東京に戻って注意深く見てみると、至る所の信号機が薄くてコンパクトなものに替わっているのがわかる。従来の信号機に比べ、昼間の太陽光の下でも色の識別が格段にしやすいというメリットもあるそうだ。確かに従来のものは運転していても時々赤か青かわからない事がよくあるので、僕のように運転する機会の多いものからすると非常に助かる技術なのだ。
最終日は藍染工房「一草」にて藍染体験。
徳島市内の大通りから細い路地を入った先に、建築雑誌に出てくるようなお洒落な民家が見えて来た。
藍染作家である梶本さんより、しばしの説明を受けた後、奥の作業場にて実際に布を染めてみる事に。染料が入った大きめの瓶(かめ)に布を浸けて染める、という作業なのだけど、まだらに染まらぬよう満遍なく染めるのが難しいらしく、ヒデさんは浸けては拡げて確認して、というのを何度か繰り返していた。
ヒデさんが体験をしている間、僕はこの家のつくりに興味が向いてしまっていて、いつか将来はこんな家が欲しいなぁ・・などと考えていた。木がふんだんに使われた作りで、とても暖かみを感じる場所だった。

最後は大塚美術館へ。
ここは西洋名画1000点近くを特殊技術によってオリジナル作品と同じサイズで複製したもの(陶板名画)が展示されていて、中に入ると、シーンとしていて澄んだ空気が肌に気持ちよく、雰囲気から展示物まで、まるで外国の美術館かと思ってしまうような場所だった。
世界の美術館を知るヒデさんだけど、何より驚いていたのはこの複製技術のようで、「これどうやってるんだろ・・。」と興奮していた。

徳島を出る時、何か不思議な気持ちになっていた。なにか、頭の中で消化できない気持ち。
愛媛から入った四国の旅で、これまでとは違う、何か特有の空気を感じつつ、それが具体的に他とどう違うのかがまだわからない。残すは香川のみとなったのだけど、なぜか既に寂しさを感じている。