2009.11.24

愛媛日記

ついに、というかやっと四国へ入ったヒデさんの旅。
ヒデさん自身も四国へは一度も来た事がないという。テレビなどで見た印象から、温暖でのんびりした場所、というありきたりのイメージが僕の中にはあった。 しまなみ海道という、島がまるで山並みのように見えるという理由から付けられた(らしい)道を通る。確かに、幾つもの様々なサイズの島々が、橋の左右に広がる海のあちらこちらにポツポツ見える。
 
島と島が幾つもの橋で結ばれていて、目の前の景観は目まぐるしく変わって行く。 その橋の上からは、真っ青な海と緑溢れる島々の美しい景色が臨める・・らしい。 そう、折角のしまなみ海道も、雨・・。
ただその悪天候もなんのその、橋から眺める島々の景色は「ここは日本??」と思わせるほどに素晴らしいものだった。
 
愛媛と言えばみかん。 まずは80軒以上のみかん農家さんが出来るだけ農薬を使わず、環境に負荷の少ない柑橘類の栽培に取り組んでいるという無茶々園へ。
ヒデさんは行く途中の車の中で、「最近って前よりみかん食べなくなった気がする。昔はしょっちゅう食べてたよな?」と言っていた。 確かに僕も、風当たりの強い東京に1人で住み始めてからは、フルーツを全然食べなくなった。
実家にいた頃は冬になれば毎日コタツにみかんやセンベイが置いてあったのに。今は風邪引いて具合が悪くならないと食べないものになってしまっている。まるで薬だ。
 
現場に着く頃には雨もパラパラと気にならない程度になっていた。傘なしでも行けそうだ。
みかんやネーブル、デコポンなどを栽培されている宇都宮さんに色々とお話を伺う。 そして実際にみかんを頂くヒデさん。宇都宮さん曰く、まだまだ甘さが足りないとの事。
ヒデさんが首を傾げているのでどうしたかと訪ねると、「いや、全然甘いんだけど・・これで甘くないのかな?」という。 僕も食べてみる。甘い・・。美味い・・。これでまだ甘くないとしたらいったい・・とヨダレが口から出そうになる。
 
驚いたのはそこの農園で飼われていた犬たち。彼らもメチャクチャみかんを食べている。
宇都宮さんが味見したみかんの残りを犬にあげている。なんというか、器用に皮を残して食べている犬たち。 犬って、みかん好きだったんだ・・。
 

 
その後、和紙などの伝統技術から様々な商品開発を行っている五十崎社中さんを訪問。
こちらにはハンガリー生まれでパリ在住のガボーさんというデザイナーが来ていて、ヒデさんと英語で話が弾んでいた。彼がハンガリー生まれと知ると、何やらハンガリー語をヒデさんが言っている。
 
「僕はハンガリー語は『#$%&¥(聞き取れず・・)』って言葉しか知らないんだ。」と英語で話すヒデさん。そこはわかった。 すると何やらガボーさんが笑っていた。
後でヒデさんに「アレは何て言ってたんですか?」と聞いてみた。 「乾杯だよ、乾杯。」 あぁ、確かこの人はロシア語でもルーマニア語でも中国語でも韓国語でもその意味の言葉を知っていたのを思い出した。
確かカンボジアやセルビアなど、行った先々の現地の人に「乾杯はなんていうの?」と聞いていた気がする。 この言葉を知っていれば、確かに場の雰囲気は和む。
ヒデさんは相手をリラックスさせる事が好きなので、それにはもってこいの言葉なのだろう。
 
ガボーさんや経営者である齋藤さんとの楽しい取材中、何かずっと気になっていた僕。ふっと部屋の隅に目を向けると、1人、ご年配の方がニコニコと取材風景を見守ってらっしゃる。
いや、それ自体はなんら変でもなんでもないのだけど、どうしても気になるのはその方のスタイルだ。医者や研究者のような白衣姿にヘアバンド、というより輪ゴムで留めたその独特の髪型、眼鏡の奥には細いけど優しそうでキラキラした瞳。
どうにもただ者ではなさそうな雰囲気を放ってらっしゃる。 その方が最後、ある袋をヒデさんに渡された。
「これ、飲んでみて下さい。しずく酒です。私が作っています。」 聞けば、その方は齋藤さんの義理のお父さん。亀岡酒造を経営されつつ、理想の地域づくりを目指されているとの事。例えば美しい棚田を残すため、率先してそこのお米を使ったお酒作りをされたりしていると、あるスタッフの方から伺った。
やはり、何かしらの理想を求め続けたり、何かに挑戦し続けている人というのは、年齢に関係なく、それを周りに感じさせる何かが必ずあるのだな、と思わせてくれる、そういう方だった。
 

 
その後は宿泊先の「ヴィラ 風の音」へと移動。またしまなみ海道へと戻るのだけど、既に日が暮れかかっている・・。
エーゲ海のような景色は明日の朝にお預けか・・。 翌朝、晴れ。心も晴れる。 朝7時出発という事で、ひんやりした空気が身を包む。早朝で車も少なく、おかげで船やしまなみ海道からは期待に違わぬ、朝の清々しい景色を堪能できた。
 

 
宿から目的地である宇和島市の松本真珠さんへは190キロの道のり。3時間近くかかってしまった。
到着して真珠の養殖を見学させてもらうヒデさんと僕ら。今まで知識としては知っていたものの、真珠が本当に貝からとれるのかと半信半疑でいた僕。目の前で実際に貝を開いて見せてくれた。
ビックリした。本当に真珠が入っている・・。 もう、あの真珠そのままだ。ツルっとして光っている。在り来たりの表現だけど、とてもきれいだった。
 

 
船に乗せてもらい、沖にある養殖場へも連れて行って頂いたのだけど、真っ青な空の下で走る船は気持ちがよかった。 「少し寒いけどね・・」 とヒデさんがポツリと漏らしていた通り、季節は11月の下旬なのでそれなりに風は冷たかったのだけど、その冷たい風でさえ心地よいほどの素晴らしい天気と、低い山々に囲まれた静かできれいな海だった。
 

 
その後は大和エネルギーさんの風力発電を見学に佐田岬へ。 これまで通った島根、鳥取などの日本海側でも多く見かけた風車なのだけど、どれも遠くから見ただけで、実際どの程度の大きさなのかとかが全くわからなかった。
近づいてみると、かなり大きい。全部で9基もあるらしく、それらから1年で生み出される電力は、一般家庭の約6500世帯分相当だという。3人家族と考えて、約2万人分だ。大阪から来て頂いた大和ハウス工業の松田さんより色々と説明をして頂いたのだけど、風が非常に強くて少し離れた場所にいた僕にはよく聞こえなかった・・。
 

 
最終日は正岡タオルさんを訪問に今治へ。 今治は国内のタオル生産の60%を占めるというタオルどころ。数年前から有名アートディレクターを迎え、「今治タオルプロジェクト」として今治ブランドを全国に発信しているとのことだ。
正岡さんの所では、素材の99%が国産のものを使用しているという、こだわりのタオルを作られている。当然、数々の超有名ホテルへも卸されているという事で、ヒデさんも「あそこもそうなんですか?」という具合にかなり驚いていた。
そう、ヒデさんはホテル住まい。ホテルのタオルには特にうるさく、正岡さんと熱いタオル談義に花を咲かせていた・・。確かに、この人ほど色んなホテルに泊まり歩き、色々な質感のタオルに触れている人もそうそういないだろうという事で、正岡さんも真剣に話を聞いていらっしゃったのが印象的だった。
 

 
愛媛では他に、酒造や焼物などいつも通り精力的にまわった。
宿泊した宿の夕食で飲んだ梅酒を気に入り、それが地元で造られていると知ったヒデさんの「明日空いた時間に行けないかな?」という一声で、翌日実際にそれを造られている酒造さんを訪問したりもした。
 
車を走らせれば静かな海やそう高くない山々といった豊富な自然に何か心癒される気分になる。 これからはいっとき四国が続く。まだ愛媛をまわったばかりなのに、「もうあと3県しかないのか・・」と思わせてしまう、そんな四国を気に入っている。
次は高知へ行く。

 

■Staff Profile
日本全国47都道府県の旅で、現場マネージャー兼、カメラマン兼、ドライバーを担当。
10代でサッカーをするために単身ブラジルへ渡った経歴の持ち主で、
ポルトガル語・英語・フランス語を話す。