2009.07.13
熊本日記
宮崎を出て熊本へ向かう途中に大雨が降り出した。
運転をする僕は最初、嫌だなぁ・・とも思ったのだけど、走る山道は初夏の新緑が雨に濡れてキラキラとしていてとてもキレイだった。曇ってはいても、見える景色と同様に気持ちも潤ったような、そんな悪くない感じがした。
しかもその日は熊本に着いても大雨だったので、ヒデさんから「今日は何も出来ないし、オフにしよ!各自熊本の情報収集とするか。」の声。 まさに恵みの雨とはこの事だ、と思った・・。
旅の移動は一見、単調にも思えるかもしれないけど、各地方の特徴をはっきりと認識できる絶好のチャンスでもある。
例えば沖縄県の宮古島はほとんど起伏のない平坦な土地柄で、宮崎県の高千穂地方の町は山間部にあり、棚田が目立つ。ヒデさんは棚田が珍しいのか、見つける度に「棚田だ。あ、また棚田だよ。」と後ろで窓から顔を出すようにしてボソボソ呟いていた。
こうして僕らは、人はそれぞれその土地に最適な暮らし方を見つけて生きているのだな、と当たり前の事を再認識させられたりするのである。
宿泊先の初日が阿蘇だった事もあり、雨も止んだ翌日は朝から阿蘇山へ。
頂上に着き、車を降りたヒデさんは1人スタスタとカルデラに向かって歩き出す。カルデラの方には沢山の人。誰かがヒデさんに気付くと、それが連鎖して多くの人に囲まれたりする事があるので少し不安になったのだけど、何事もなく15分ほどで車に戻って来た。
車に乗り込むなり、「まぁ、カルデラだな。」とヒデさん。
「まぁ、そうですね。」と言葉少なに相槌を打ち、黒川の温泉街へ向けて車を走らせた。
黒川では30分ほど散策。小さいのだけど、色々とかわいらしいお店があって楽しい。車に戻ると後ろから「はい。これ昼飯にしよう。」とヒデさん。
渡されたのは濡れせんべい。濡れた、せんべいだ。 食感はヘビーだったけど、昼飯としてはとてもライトであった・・。
熊本北部をまわった後は天草へ。天草は上島と下島とがあって、目的地はその両島を横断しきった下島の端である。上島に入るまでに2時間、そこからまた1時間半、、、2時間ほどかかる移動だ。
森に囲まれた道を延々と走り続ける。すると目的の宿が近い事を示す東シナ海が見えてきた。夕暮れ時という事もあり、海が赤焼けていて、助手席で気持ち良さそうにウトウトしているディレクターの牧(以下牧D)の顔を照らしている。
つい、溜め息が漏れる・・。 天草灘にぶつかって左折、海沿いの389号線をしばし南下する。するとちょっとした展望台のようなものが目に入る。
「ちょっと行ってみよう」とヒデさん。この人は移動中もほとんど寝ない。
そこはほんとうに狭い公園のような場所だったのだけど、天草の海が一望できる所だった。 すると牧Dが感慨深げにポツリと言う。
「いやーついに日本海に来たんですねぇ。」 それに反応するヒデさん。
「あ、これ日本海なんだ?」 は?・・いやいやいやいや、ちょっと待ってくれよと熊本出身の僕は主張させて頂いた。 「あのー、これ、東シナ海のはずなんだけど・・というかそうなんだけど・・まったく君、行く場所の地図見たりとかしないの?」と呆れ気味に訂正する。
「あーそうなんすかー?」とたいして気にもしてなさそうな牧Dに納得が行かない僕をよそに、そういう会話に全く興味のなさそうなヒデさんはずーっと海を見ていた。
その視線の先には、確かに、喋ったりするのが勿体ないほどに美しい海が広がっていた。

天草では「五足のくつ」に宿泊。食事の際に出た塩が非常においしく、「これは地元の塩ですか?」とヒデさんが訪ねた事から紹介して頂いた製塩所を訪ねた。
そこはまさに海岸線の砂浜から土手を挟んですぐの場所にあり、ひっそりとした雰囲気の、だけどとても良質な塩を作っているところだった。
この「「天草塩の会」の松本さんという方は四国から天草に移り住まれていて、知らない土地で事業を始める難しさや、塩を作る上で必要な忍耐力の話などとても興味深い話をして下り、ヒデさんもお茶を飲みながら2時間くらい座って耳を傾けていた。
ただ、そこには犬が2匹いたのだけど、内1匹がやけに僕に吠え出し、目で「しぃーっ!吠えるな!」と訴えても火に油状態で話にならず、折角良い話をして下さってるのに邪魔になってはいけないので僕は外へ避難するハメに。立ち去る僕の後ろ姿にこれでもかとばかりに吠えまくるあの犬・・。 いったいあの犬は僕の何が気に入らなかったんだろう・・と少し落ち込んだ・・

そんなこんなで色々あるけど、次は大分へと向かう。