2009.07.07

鹿児島日記

また旅が始まった。
旅の一日は長い。朝は早く、夜は遅い。日中の休みもほとんどない。
それもこれも、限られた時間の中で、出来るだけ多くの人に会いたいという、ヒデさんの意向があっての事だ。 今回の鹿児島では、種子島にも足を伸ばした。島は思ったよりも大きく、訪問先が南部、中部、北部と離れていた事もあり、移動に予想以上の時間がかかった。

ただ、国道58号線を南から北上する際に西の海岸沿いを通るのだけど、その景色と車中に舞い込んでくる潮風のあまりの気持ち良さに、「もっと渋滞して時間かかってもいいのにな・・」とまで思えてしまった。
助手席では牧ディレクターが「気持ちいいなー!」と幸せそうに連呼していた。完全に旅行のノリだ。

ここではヒデさんのリクエストである芋焼酎を作っている種子島酒造さんを訪問。焼酎の利き酒(飲み比べ)をさせて頂いたり、製造過程を見せて頂いたり。
作り方の説明の間は、ヒデさんも非常に興味があるのか、酒造りの基本的な部分について何度となく質問を繰り返していた。 醸造所内は焼酎の香りが充満しており、後の利き酒が楽しみだな、と熊本出身で焼酎好きの僕の表情は自然と緩む。

そしていざ利き酒。するとヒデさんが僕を見てサラリと言う。
「あ、キンヤは運転だから飲めないな。」 あ・・飲めないんだ、僕。 完全に自分が運転だという事を忘れていた・・やるせない思いに苦虫を噛み潰したような表情をしている僕をよそに、ヒデさんに便乗して牧ディレクターが「いただきまーす!」と満面の笑みで試飲する。
口にグラスを持って行くあたりでチラっとこちらを見るその姿に腹が立ってきたので、僕は利き酒中は外に出る事にした。

2日目、場所は変わって鹿児島市内。中心部にほど近い、浅田錫器店へ。
店主の浅田さんはとても快活で気持ちのよい方。ここでヒデさんは基礎から錫器作りを教えてもらう事に。 さすがに初めての作業で思うように行かない部分もあったようだが、浅田さん曰く「筋はいい。飲み込みも早い。」との事。
この時思ったのだけど、ヒデさんは意外と器用、しかも「ハマる」タイプ。やり出したら、この日も自分が納得するまでやっていた。

作業も終わり、浅田さんより「錫で飲むビールは絶品ですよ!最後に是非飲んでみて下さい。」とご提案して頂く。ヒデさんより先に牧ディレクターが元気よく挙手。
外は炎天下だし僕も本当に飲みたかったのだけど、そのお二人の表情が最高だったので、なんとなく気持ちがよかった。

翌日は朝の6時半に旅館を出発。枕崎市の神山鰹節店へ。 僕らが到着した8時頃にはもう既に作業が始まっていた。 ヒデさんも早速着替えて作業に参加させて頂く。
その時面白い光景と出会った。 僕らより30分ほど後に地元水産高校の研修生2人が作業場に到着。
するといきなりヒデさんが「遅いよ!早く準備しろー」と冗談っぽく声を掛けた。 「キョトン」として目を丸くしている2人の学生。
「え?誰??うん?中田!?」とあの世のものにでも出会ったかのような、まさにそういう表情をしていて、本当に笑えた。

確かに、まさかヒデさんが鹿児島の鰹節店で作業着と防水エプロンを着て朝から魚を捌いているとは想像も出来なかったと思う。 そこには中国からの研修生の女の子もいたのだけど、何かと仕事などで中国に行く機会のあるヒデさんは、その子に中国語で自己紹介をしていた。
彼女の困惑した表情を見る限り、伝わっていたかどうかは微妙なのだが、帰り際に恥ずかしそうに写真をお願いしていたのを見ると、多分ヒデさんの事を知っていたのだろうな。

僕らの一日の移動時間は長い。当然お昼ご飯を食べる時間がない場合もある。そんな時、ヒデさんは必ずコンビニに寄る。ただ食料調達というよりも、地元にしかないようなお菓子やドリンクを探すのが大好きらしい。
昼飯とおやつで一杯になったコンビニ袋を持って車に戻ってくるヒデさんが、どんな時より嬉しそうな顔をしているのは、32歳の大人としてどうかとも思うけど・・。
ちなみに、この人はよく飲み物を後ろでこぼす・・。

こういうリズムで、旅は宮崎へとつづく。

■Staff Profile
日本全国47都道府県の旅で、現場マネージャー兼、カメラマン兼、ドライバーを担当。
10代でサッカーをするために単身ブラジルへ渡った経歴の持ち主で、
ポルトガル語・英語・フランス語を話す。