2011.08.08

山梨日記 後編

その後、予定にはなかったのだけどヒデさんがチェックしていたフジッコワイナリーさんに寄る事に。ずらっと並んだワイン、それぞれを少しずつ試飲できる仕組みになっていて、牧とヒデさんが楽しそうにしている。運転で飲めない僕は、2人から少し距離を置いた。
普通にワインを数本買って出ようとしたとき、ヒデさんに気付いたスタッフの方が、店頭にはなかった桃ワインを「是非飲んで頂きたくて」と急いで工場から持って来てくれた。
こういう心遣いによって、旅が彩りを帯びるのだなと感じた。

 

その後もワイナリーへ。訪問先は「丸藤葡萄酒工業さん」。
程よくヒンヤリした蔵の中の一室で、社長の大村さんのお話を聞く。
勝沼醸造さん、フジッコワイナリーさんと試飲と言えども結構飲んでいるはずのヒデさん、話題が大好きなワインという事もあって、どこか饒舌だ。
そんな彼を見ていると、その道に於ける経験豊富な方との会話によって知を深める事が本当に楽しそうだ。ただそれは、僕らも同じだと気付いた。脇で黙って聞いていても、退屈する事がないくらいなのだから。

 

 

勝沼町を出た僕らは古屋農園さんに寄ってから甲府市にある昇仙峡影絵の森美術館へ向かう。
途中、ヒデさんの実家近くを通る。パソコンを置いて、窓を開けて外を見ながら、「これ俺が行ってた中学校だよ。」などと昔を振り返っている。
美術館は山の上の方にあって、結構な山道を登って行くのだけど、ヒデさんは昔、練習でこの山道を登っていたことがあるらしい。ふと、道の端を走っている中田少年を想像してみる。
多分、ヒデさんにもかわいらしい時期があったのだろう…。
到着すると、なんとこちらの平賀館長はヒデさんの幼馴染みとの事。そして平賀館長の奥さんに至ってはヒデさんの高校のクラスメートだと聞いて僕らも驚いたのだけど、ヒデさんも当然驚いていた。
館内を一通りまわった後、談笑しているヒデさんに隠れて、牧が平賀さんの奥さんにコソッと話を聞いていた。
「何か、ヒデさんの弱みはありませんか?僕らはいつもやられっぱなしですから…」
とんでもない事を聞いてるなコイツ、と思いながら、「どんな些細な事でも構いません。」と僕も聞いてみる。するとこんな答えが返って来た。
「けど、中田君は同じクラスでしたけど、サッカーの試合とか合宿で、本当に学校にいる事が少なくて、休み時間も疲れて寝てたり、なのに勉強は出来るから、触れられない存在というか、もう本当に雲の上の存在だったんですよ。」という返事がかえってきた。
結局、自分たちの小ささだけを浮き彫りにされたようで、恥ずかしい気持ちになった僕と牧だった…。

 

5日目、朝から武田神社、山梨県立美術館とまわり、山梨大学にある「ワイン科学研究センター」の柳田教授を訪ねた。
こちらは国内で唯一の果実酒を専門にした研究機関。
ジェスチャーを交えてお話下さる柳田教授はやはりというか、如何にも白衣が似合いそうな方だった。何となく、日本でワインと言えば長野と山梨かな、と思ってはいたのだけど、国内に200近くあるワイナリーのうち、80が山梨にあるという。
熱くワインの歴史や品種の味などについて語られた後、「私、元々お酒飲めないんですけどね。」と柳田さん。「え?」と驚く僕らだったのだけど、理屈としては、野菜は食べれないけど野菜作りには興味がある、というヒデさんと同じなのだろうと妙な納得の仕方をしてしまった。

 

 

それから「水晶彫刻の名工である河野道一さん」を訪ねた後、勝沼へ移動。ブドウの「夏八木農園さん」を訪ねた。
会うなり、夏八木さんからはすごいエネルギーを感じてしまった。
とにかく、快活。ぶどうを始められて17年というのだけど、「子供の頃から夢は農家でした。」と笑顔でおっしゃる。奥さんもとても明るい方で、仕事内容で大変な事や、旦那さんが仕事熱心過ぎる話なども正直に教えて下さったのだけど、笑顔で語られるだけに、僕に伝わって来たのは、「あぁ、幸せなんだなぁ…」という事の方が大きくて、なんだかほっこりした気分になってしまった。

 

その後で「桃農家の久津間紀道さん」を訪ねてその日は終了。
そして最終日、まずは「谷櫻酒造さん」へ。
こちらは北杜市の大泉町にあるのだけど、車を降りると、その空気のあまりの美味しさに、鼻の悪い僕でもすぐさま気付く。応接間にてヒデさんらがお話を聞いている間、僕は蔵人の方が食事時に使うという丸いテーブルにて、ゆっくりと御茶を頂いていた。丸いテーブルは大きな窓に面していて、とても気持ちの良い場所だった。真夏でも、暑さを感じる事はあまりないとの事。この時本当に、「ここに、住みたいな…」と思った。

 

 

最後の訪問先はワイナリー、「BEAU PAYSAGE(ボー・ペイサージュ)の岡本英史さん」。
こちらのワインは、洞爺湖サミットの晩餐会にて「日本のワイン」として世界の首脳に振る舞われた経歴を持つ。
岡本さんは「メルロー」をつくりたいと3年土地を探して、やっとこの標高800mにある場所を見つけられたとの事。
そのこだわりは、根底に「農業」があり、もう自然農法で10年やられていると聞いて驚く。ヒデさんも、「虫とか、大変じゃないですか?」と聞くと、「まさに、仕事の大半が虫取りなんです・・」と苦笑いをする岡本さん。
とても大人しい印象の岡本さんなのだけど、「できるだけその年の、その土地のワインを、なるだけ手をつけずにつくりたいんです。」と言われた時に、ものすごい情熱を感じた気がした。

 

 

帰りに、ヒデさんが昔から行っているらしい「ヴィラ・アフガン」というカレー屋さんにも寄った。「ここはうまいよ!」と、久々なだけに興奮気味だ。
山梨の旅をする前、ヒデさんは「地元だけど、ほとんどいないし、あまり知らないから…」といってどこか距離を置いている気がしていたのだけど、旅を終えてカレーを食べている時の会話やそのご機嫌具合をみて、山梨が本当に好きになったんだなと、正直な気持ちが伝わってきた気がした。

 

次は千葉へ行く。

 

■Staff Profile
日本全国47都道府県の旅で、現場マネージャー兼、カメラマン兼、ドライバーを担当。
10代でサッカーをするために単身ブラジルへ渡った経歴の持ち主で、
ポルトガル語・英語・フランス語を話す。