2013.07.20
山形日記中編5
4日目、この日は山形県内でも日本海側にある、鶴岡市付近をまわる。まずは羽越しな布(関川しな布センター)を訪問してから、陶芸家の中村秀和さんを訪ねた。中村さんは青磁をやられるのだけど、何気なく工房に置いてある作品の色、明るい色なのに、どことなく深みを感じさせる。写真を上手に撮れないのが悔しいと感じる…。

中村さん、茨城の旅で訪ねた陶芸家の福野さんとものすごく仲が良いとの事。
「彼は小学生の時、お年玉で陶器を買ってたんですよ。それでもう10年の差がありますよね。彼は年下ですが、尊敬しています。」
ヒデさんも、釉掛けを体験させてもらう。中村さんの、「沢山まわられて、目もとても肥えたんじゃないですか?」という問いに、ヒデさんが答える。
「自分は技術などの知識はないですから、見てみて、良いなとか面白いなと思えるかどうかですよね。誰が作ったとかは、あまり考えませんよ。」
高名な作家にも最近ではやけに詳しいヒデさんだけど、根底にはそういう考えがあるのだ。それに対して中村さんも、「主観で見てくれる人がいるのは、作家としてはすごく嬉しい事ですね。」と笑顔で話された。

それから僕らは井上農場を訪問。鶴岡にある有名なレストラン、アル・ケッチャーノに野菜を卸されているところだ。こちら、鹿児島から抗生物質非摂取の鶏糞を取り寄せて、土作りからこだわり、安全で美味しいお米や野菜を作られているところ。ただ、こちらにもやはり温暖化の影響が少なからず出始めているとの事、「気温が一気に上がったり下がったりしますから、お米の積算温度にも影響して来るので…。」と大変そうだ。他にも、TPPの問題なども話題に上がったのだけど、やはり農家さんだけに、TPPの是非を問われる事が多いとの事、少し戸惑い気味に、「色々な分野が絡んでいますから、私たちに一概に判断は出来ませんよね。」と話される。
こちらには、つや姫、コシヒカリ、ひとめぼれ、はえぬきを少しずつ食べ比べ出来るような商品も。これはこれまでもヒデさんが事ある毎に「こういうのあったらいいのにな。」と話していたもので、ギフトなどでも喜ばれそうだなと思った。

この日は最後に亀の井酒造を訪問して終了。
5日目、この日も昨日から激しく降り続いている雨は止まず・・。早朝から、小雨のタイミングを見て同腹の滝に行こうとするも、途中にあった小さな木の橋が小川の氾濫で渡れずに断念。

それから楯の川酒造さんを訪問し、酒田酒造さんを訪問。丁度、梅の時期という事もあり、自分達の畑で作ったもので梅酒を造られていた。

蔵をご案内頂いた後、応接用のバーへ通して頂いたのだけど、こんな場所が家にあったら毎日飲んでしまうなと思えるような場所だった。

次の訪問先は平田牧場。たった2頭の豚から始まったというこちら、直営・グループを合わせると今では年間約20万頭を出荷出来るほどの規模になられたという。まずはお肉の加工場、ハムやソーセージの加工場などを見学。すごい量のお肉が、ここで加工されて全国に出荷されているのだ。
こちらの主力商品は平牧三元豚。「国内で出回る豚肉の7割は三元豚です。」という。色々とある加工品がある中、「一番の売れ筋はなんですか?」というヒデさんが聞くと、「やはり、ウィンナーですね。」との事。餌にも相当こだわられているとの事だけど、こだわるという事は当然それだけコストがかかる。それについても、「味の為には仕方ないですね。」と笑って話される。
茹で上げられたばかりのソーセージを、試食させて頂く。ホクホクしているのは当然だけど、歯ごたえとそのジューシーさ加減がすごくいい。それを担当の方に伝えると、「その食感を出す為に、40年くらいかかってます。」と笑って話される。
他にも、場所を移して僕らも沢山試食させて頂く。こちらの製品は全て無添加という事なのだけど、それ以上に驚かされるのは従業員の方だ。
広い工場をまわっていて気付いたのだけど、皆さん必ず手元を止めて僕らに挨拶をして下さる。こういう細かい部分が、美味しさとなって商品に反映されているのかもしれないと思わされた。

それから次は本間美術館へ向かった僕ら。こちら、明治以後は皇族や政府高官などを接待する酒田の迎賓館としての役割を果たしていたという場所。
中に入ると、静かで、昔の香りがまだ残っているようなそんな印象を受ける。どこか、心が落ち着くのを感じる。2階から庭園を眺める。今ではあまり見る事のない、手作りで造られた窓ガラスは波打っていて、それを通してみる雨に濡れた庭園には、どこか風情を感じてとても美しいものだった。
こういう場所に来られる事を、最近ではとても嬉しく思う。

この日は最後に土門拳記念館へ行って終了。
6日目、まずは染織の山岸幸一さんを訪問。山岸さんが染織を始められた頃の着物を見せてもらう。ヒデさんが寡黙に数十秒眺めている横で、僕も近づいてしっかり見ていると、「草木染めの良さは、古くなっても古くならないんです。」と山岸さん。矛盾しているようなその言葉だけど、考える程にとても的確に表現された言葉だとわかる。山岸さん、以前は化学染料を使った時期もあったとの事。
「ただ、その経験があるからこそ今があると思います。違いがわかりますから。」
紅花染めを主体としているという山岸さんの話を聞いていると、とても精神性を大切にされているのがわかる。
「お年を召した方に、明るく着物を着て欲しいですね。お年を重ねた方に紅は最適ですから。」
そう話される表情からその優しさが伝わってくるのだけど、ご自身の仕事に関してはやはり思いの強さが垣間見れる。個人的に一番印象に残った言葉がある。
「明治以後は“今”が100%の文化になったように思いますが、それ以前は時間が経つほどに美しくなっていくという文化がありました。それに気付いてからは、もう化学染料には戻れません。」
これはきっと、美を求める視点なのだと思う。目の前にある美と、時間の経過とともに現れる美。どちらが良い悪いではないと思うけども、奥ゆかしさという意味では、やはり後者だなと思った。
