2008.07.17

「TAKE ACTION! 2008 !!」パート4

 

====

こうして、試合日と場所が決定、選手のリストも作り始めた。でも、肝心のこの試合を実施するための予算確保もすべてがゼロからのスタート、前述したが、最終的なリスクは自分が負うにしても、はじめから自分でお金を支払うつもりでやるのはよくないと思った。継続するためには収支を少しでもトントンにしないといけない。自分でやると決めた企画だ。何もかも自分で理解して、納得しなければ出来ないのが俺の性格だ。そこで、通常の国際試合などをオーガナイズするためには、どの程度予算が必要なのかを調べる。そして、どういったことにどの程度のお金が出ていくのか細かく調べていく。それが適正価格なのかも調べてみる。この作業は、選手として試合に出ていただけでは絶対に分からない、頭の痛くなるような細かさだった。でも本当に生きた勉強だった。それとともに1試合をやるだけで、どれだけの人が周りで働いているのか、と言うことも実感させられた。選手時代にはそんなことは考えたこともなかったが、実際に自分が企画運営してみて、その大変さを知り、遅ればせながらも試合にたずさわってくれていた多くの関係者に感謝した。

 

スポンサーの協力に関して俺はある程度、問題なくお金が集まるだろう、と楽観していた。どこからこの自信が来ていたのかは分からないが……(苦笑)。が、実際には苦悩の連続だった。俺が理想とする選手フォローを実現したり、試合の告知や、一番大切なメッセージを伝えるための広報をするには、単なる試合と違って予算はかさむ。日本代表にスポンサードするのであれば、確実な露出もチケット収入も、放映も決まっているので営業はここまで難しくないのかもしれない。でも昨今のサッカー人気は以前と比べて厳しい状況だ。とくに、今回の試合に関しては、海外の選手も未決定、あの大きなスタジアムを観客で一杯にするのは不可能。チケット販売も期待できない。さらにTV放送も決まっていなかった。そんな条件でスポンサーが簡単に付いてくれないのは、今思えば当たり前と言えば、当たり前か……。でも、そんな事にめげず、日本の会社だけではなく、韓国や香港にまで飛行機に乗って話をしに行く。そうすると、韓国や香港では興味を持ってくれるところが多く出てきた。香港では香港でやってくれればすぐにその条件でスポンサーしましょう、とまで言われた。でも、どうしても今回は日本でやりたかった。韓国に関しては、最終的には日本で開催するのにも関わらず、HYOSUNGという財閥が、スポンサーになってくれた。(後日韓国にも試合が放映されて高視聴率をとったらしい。嬉しい話だ。)日本の方では依然苦戦していたが、俺が直接いろんなところに話に行き、どうにか少しずつ支援してくれるスポンサーが見つかってきた。最終手段としては、自分で持ち出してでもやることも決意しつつ臨んだ試合だったが、最後には、多くの企業の賛同を得ることが出来、本当に感謝している。

 

チケット販売に関しては、チケットぴあが協力してくれた。さすがにチケットだけは、自分たちで一からやるのは無理だしね。ただ、最初話をしたとき、どの程度チケットが売れるか、という予想をしてもらったときには、今のサッカー人気を鑑みると、冷静に見積もっても、販売二万五千席が妥当だろう、と非常に厳しいことを言われた。本来ならば、チケット収入も頭に入れながら予算を決めていかなければならないのだが、俺としてはこの試合を“Charity Match”と呼びたくなかった。だから、極端に言えば、分かりやすくするために当初はチケットは“無料”にしようと思っていた。何故かというと、チケットの販売をしてこういう試合を行うと、メディアや、多くの人はその試合の意義だったり、試合の楽しさよりも、そのチケット代がどこに寄付されるのか、というところに着目してしまいがちだからだ。だから、これが明確に Charity Matchではない、ということを押すためにも、本当はチケットは無料にしたかった。

 

でも、現実問題、オークションでの転売やら、有料で行っている他のサッカーの試合との兼ね合いを考えると、無料にすることで派生するあらゆる問題も予想された。正直スポンサー獲得にも難航したこともあり、“試合を行う上での最低予算”を作るためにも、チケットを販売することに決めた。ただ、それでも通常の試合のような値段にはしたくなかった。それは、出来るだけ価格を低く抑えることによって、より多くの人に来てもらいたいと思っていたから。そんなこんなで有料にはしたが、今回設定した価格は、ぴあが予想した二万五千枚ではなく、最低でも五万枚以上売れて初めて試合が成り立つ程度の値段だった。まあここまできたら、売れなかったらその分は自分で払って試合を成立させようと覚悟していたけど、逆に言えば、絶対にそのくらいは来てもらえる試合になると信じていた。

 

チケット販売以外にも、当日のスタジアム回りの警備からボールボーイの子供、電車の増線、当日の進行日程、など多岐にわたり考えなければならないことがあった。ただ、嬉しかったのは、頭の痛い日々が続く中、1番重要視していた試合の中継も日テレで決まったり、それ以外にも雑誌やラジオなどの各種媒体の協力で、試合の意義を伝える場が沢山もてたこと。またその報道が増え、試合が近づくにつれて、スポンサーとして名乗りを上げてくれるところが徐々に増えてきたことなどだ。やはり先ほども言ったように、実際に、試合会場に来て試合を見られる人は数万人しかいない。しかし、TVやラジオ、雑誌等を通じて俺が伝えたいことを受け取ってくれる人は何十万、何百万何千人にも上る。逆に言えば、試合がはじまれば、サッカーはサッカーだ。でも当日の試合で何か伝えると言うことよりも、この試合に到る前の段階で、多くのメディアを通じて、どれだけの人にこのメッセージを伝えられるか、ということがより重要だった。そういう意味では、今回の試合でスタッフは、“のべ一億人に伝える”というスローガンを持って臨んでいた。実際にどこまで多くの人に伝わったかは分からないが……。ただ、その実数は分からないけれど、本当に多くの媒体が協力してくれて、かなりの成果は得られたと思っている。改めて感謝したい。

 

そうして、紆余曲折を繰り返していったこの“TAKE ACTION! 2008″は約1年間の準備期間経て実施された。試合当日まで、眠れない日々を多くのスタッフが過ごし、最後の選手の調整からスタジアム回りの手配、空港での受け入れからHotelでの対応などすべてを行った。その結果、63,143人もの人が横浜に集まり、参加してくれた。多くの選手達や家族からも感謝の言葉をもらえた。最後は倒れそうになりながら“もう2度とやりたくないと”言いながら頑張っていたスタッフ達も、その光景を見、感動し、試合が終わった後には、またやりたいと言っていたのが、俺は本当に本当に嬉しかった。

 

そして、当の俺はというと、終わってすぐに、来年またこの企画をやるべく、スポンサーや選手との話し合いを始めている……。来年に本当にこの試合がまた出来るのか……。そして、どこの場所になるのやら……。先はまだ分からないけど、俺はこの試合を通じて、サッカーの楽しさを今また感じ始めている……。