2004.02.20
これがWC予選!!
辛勝、運が良かった、まぐれ……。
なんと言われようと、これがWC予選を“勝つ”ということなのだ。
4年に1度開催される世界で一番大きなサッカーの大会。すべてのサッカー選手の夢。
勝つためだったらどんな厳しさも泥臭さ汚さも厭わない。それがWorld Cup!! どんな相手、どんな試合だろうと簡単な試合など1試合もあるはずがない。ここで一番重要なのは、“勝ちきる”ということだ。だって、こここそが“本番”なのだから……。
0-0 のまま90分が過ぎ、このまま引き分けで終わるかと思われたロスタイム。相手のクリアミスが俊輔の足に当たり久保の目の前へ。まるでその瞬間だけ時間が止まったかのようなゆっくりとした時間が流れる。久保は落ち着いてキーパーの動きを見極め、右隅へ流し込む。それが決勝点になり1-0での勝利。
ゴールが入った瞬間は、俺はオフサイド確認のために線審を見た。が、もちろん旗は上がっていなかった。他のみんなは一瞬、そのゴールが嘘か本当か分からなかったかのように戸惑う。次の瞬間、歓喜の爆発。オマーンの選手は緊張の糸が切れたかのように数人がグラウンドに崩れ落ちた。オマーンは非常に若い選手が多く、その身体能力の高さを生かしたマンツーマンマークから速攻を主体としたサッカーを展開してきた。技術的にも高いものがあり、アフリカのチームに非常に似ていた。局地的な1対1にも強く、唯一足りなかったと思われる点をあげれば“経験”だろうか。しかし、誰が何を見て知って、このオマーンを“格下”と決めつけていたのか、本当に不思議だ。
試合は、ある程度予想していたとはいえ、日本はかなり苦しんだ。
前半は、相手のDFが真ん中に寄ってしまう傾向にあるのを見て、サイド攻撃を繰り返し仕掛けた。何度かチャンスを作りかけたが、最後のセンターリングからシュートへの精度がイマイチで決定的チャンスにはならず。
後半、日本が疲れ始めたことや相手が修正をしてきたこともあってサイド攻撃がなかなかできなくなってきた。試合が膠着してきたところで、遠藤に代わり小笠原。小笠原はそれまで俺がいたポジションに入り、俺は一歩下がった稲本により近い位置へポジションを取った。
この変化が相手に混乱を与えた。それまで俺のマークについていた選手は、俺が味方の自陣深くまで戻るためについてこられず、それにより、俺は後方から自由にパスをまわすことができた。さらに、そのポジションチェンジが結果、中盤のスペースを作ることにも。そこを特に小笠原が上手く突いた。チャンスをいくつか作り出す。が、ゴールを決めるには至らず。
オマーンは後半に入っても相変わらず、ボールを取ってからの速攻をくり返す。オマーンの速攻は非常に有効で怖さがある。ただ、最後の詰めの部分にまだ甘さを残し、決定的には至らなかったが……。だが、これは日本が見習わなければならない一つの点ではあると思う。攻撃時の“迫力(怖さ)”という部分で。
そして、後半の45分が過ぎ、残りロスタイム……。
日本はこの時間帯ロングパスを多用し、そのこぼれ球を狙い続ける。
そして、相手のミスからゴール。
ロスタイムに入り、オマーンにはある種の達成感があった気がする。逆に、日本は泥臭くも最後まで諦めずに攻め続けた。その小さな差だったような気がする。
本当にこの小さな差が結果に出たのではないかな……。
ここ最近のメディアの風潮を見ていると、まるで日本が、この7年でサッカーの“現実”を忘れてしまったかのような感じがする。1997年、WC予選を勝ち抜くのに、どれほどの苦労したのか。今回のオマーン戦のように、残り数分、数秒という、ぎりぎりの戦いを勝ち抜いた結果、1998年、フランスのピッチに立てたのだ。
日本は確かにこの7年で成長しているかもしれない。でも、他のチームも成長しているのだ。それが、2002年のホームで迎えたワールドカップを通じて、まるで日本だけ成長して、周りは変わっていないのではというような、そんな錯覚を起こしているように見える。
“本当の強さ”は、苦しい戦いを重ね、結果を出し続けたモノだけが得ることができるモノだ。1度や2度、ワールドカップに出た程度では得ることなどはできない、このサッカーというスポーツの歴史の重みがそこにはあると思う。
さて、今回の大きな反省点(予選を突破するための課題)は何か。
細かくあげれば沢山あるが、とりあえずは大きく2つあると思う。
1つはこのWC予選という『本当の戦い』を、戦い抜くだけの気持ちの強さ(精神面)。
もう1つは、今回のように守ってきた相手に対しての攻め方(戦術面)。
1つ目の気持ちの強さとは……。
今回、試合前日の練習、そして試合前でさえも、チームに、戦いの前の盛り上がりを感じることがほとんどなかった。まるで、この大切な試合が、これまで行ってきた親善試合とまるで同じようにさえ思えた。俺はみんなに“やる気”を見せる必要がある、と言っているのではない。が、しかしチーム全体での“戦う(勝つ)”ための雰囲気作りというのは、必要なことだと思う。その静かな興奮が、試合での積極性を出し、更にはチームのまとまりも作り出すものだと思うから。が、残念ながら今回はそんな雰囲気をまったく感じることができなかった。うまく言えないけれど、これは、一人ひとりが自らその必要性を感じるべきだと思う。
2つ目の攻め方について……。
日本はこれまで実力的に同等か、格上の相手との試合を多くやってきた。結果、対戦相手が今回のオマーンのように極端に引いたり、マンマークを厳しくつけてくることがなかった(東アジアやマレーシア戦などを除いて)。そのために、こういう時の戦い方に慣れていない部分があったと思う。こういう相手との戦い方はいくつかあると思う。
1. ダイレクトパス、特にワンツーを多用することによって局地的な2対1を多く作る。特に、マンマークの相手には効き目大(今回のオマーン戦ではこれがまったくできなかった)。
2. 一人が空けたスペースにもう一人が入ってくるという連動した動き。特に、MFが空けたサイドをFWが使ったりその逆だったり……(今回は多少はできたが、まだまだスムーズじゃなかったし回数的に足りない)。
3. ディフェンスラインでの早いボール回しを繰り返し、その中でMFが入れ代わり立ち代わりでそのボールを受けに下がってくる。マークがついてきたらダイレクトでボールをまたDFに返す。これを繰り返していると、徐々にマークがずれてくる(フランス代表なんかがよくやっていた)。
簡単にあげるとこんな感じかな。やはり、これからの試合もこういう展開になることは予想されるし、もっとこういった戦術を共通理解のもとに話し合ってやっていく必要があるのではないかと思う。特に動きの連動性が、今の日本には足りないと思う。
そして、俺個人として一番悔やまれるのは、前半の立ち上がりにあったチャンスを決め切れなかったこと。右サイドの俊輔からペナルティーエリアのちょうど外にいた俺に来たパスを胸でワントラップしてシュートを打ったシーン。トラップまでは良い感じだったんだけども、その後シュートを打ち急いでしまった。他には、試合開始後できるだけ早い時間帯に相手にもっと厳しいプレッシャーを与えて(激しくボールを取りに行くなど)、チーム全体に厳しいプレーをするんだ、という雰囲気を伝え切れなかったこと。もちろん、細かい技術的なミスもあったが、この2つは試合を左右するだけの要素があっただけに、大きな反省になった。
ともかく、まずは1勝。確かに内容は褒められたものではないが、一番重要な結果が出たことと、このWC予選で勝つということの厳しさをみんなが身をもって体験できたということは非常に次に生きてくると思う。今回の予選は、良くも悪くも試合と試合の間に時間がある。今はこの時間を生かして、次に向けてしっかりと修正していきたいと思う。
見ている(応援している)みんなも、見ているだけで気力を消耗したんじゃないかと思う。確かに、もっと早く試合を決めてくれれば、なんて思うだろうけども、このヒリヒリするような感じは唯一、このWCでしか味わえないもの。だから、逆にそれをもっと楽しんで!!