2012.02.15

茨城日記 前編

茨城県。季節は2月、寒い。
最初の訪問先は幻の高級豚と言われる「梅山豚(めいしゃんとん)」を育てる塚原牧場さん
「父が中国から輸入して来て、オス8頭とメス2頭から始めました。」と塚原昇さん。今では中国政府が輸出を禁止しているとの事で、現在国内ではここ塚原牧場と農林水産省とで合わせて100頭ほどしかいないという。これを聞いただけでも、トンでもなく稀少な豚だとわかる…。
餌は何か特別なものですか?とヒデさんが質問。
「餌は、僕ら人間の食品の副産物を独自配合したものを使っています。」
へぇ…と思って聞いていると、「何か理由があるんですか?」とヒデさんが突っ込む。
「普通はトウモロコシとかなんですけども、変な話、アフリカとかでは今でも飢餓で苦しむ子達が沢山いるんですよね…。」
この方も、ご自分の仕事だけでなく、そのもっと遠い所を見て仕事をされている。色々な情報を集めた上でヒデさんが訪問先を厳選するこの旅では、訪問する方にはそういう人がなぜか多いのだけど、それは偶然ではない気がする。

 

 

それから僕らは下妻市へ。ホワイトいちごを生産するストロベリーフィールズの遠藤健二さんを訪問。
ついてすぐにハウスへ。実際にホワイトいちごを見せて頂いたのだけど、事前の情報があったとは言え驚いた。人工的なお菓子のように、本当に白い…。
「どうしてイチゴなんですか?」というヒデさんの質問に、「やっぱり、イチゴって人に喜ばれますよね。」と控えめに答える遠藤さん。
このホワイトいちご、色素は赤と同じくらいあるらしく、とても不思議だ。
「白が注目されがちですが、うちはやっぱり赤いイチゴが売りですね。白は一時的で、それを主力にすると赤いイチゴのお客さんが逃げちゃいますから。」
そんな遠藤さんが、とても良いお話をして下さった。
「最初は、イチゴ作りは飯の種だったんです。」と明かされる。
「いつだったか、“入院している息子に食べさせたい”と言ってお母さんがいらしたんです。重い病気で食欲がなかった時も、うちのイチゴは美味しいと言って食べてくれてたみたいで…。残念ながら息子さんは亡くなられたのですが、御命日に買いに来てくれて、今では妹さんが“ここのが好き”って言ってくれているみたいで。それからイチゴ作りに対する意識がガラっと変わりました。」
またまた、良い仕事だなぁ…と思わされてしまった。自分が作るものが、誰かの人生に強く残る仕事が羨ましく思えた。遠藤さんもそうだったように、最初から自分の仕事にそんな力がある事を意識していなくても、何かのきっかけでそれに気付く事が出来るのかもしれない。そのお話を聞いた後は、かじったイチゴの甘味が増した気がした。

 

 

2日目、まずは来福酒造さんを訪問。
こちらでは全国各地の複数の酒造好適米を使用されているとの事なのだけど、年々と地元米の比率を増やしているとの事。その中に「ひたち錦」という酒米があり、その特性は硬さにあるらしく、ならば削ってやれという事で、なんと8%精米を実現されている。つまり、元の玄米の92%は削り取っているという事で、もはやお米だとわからないほど。
これはとても珍しく、100軒以上の酒造をまわっているヒデさんもとてもビックリしていた。

 

 

その次は土浦市へ。有機農業に取り組む久松達央さんを訪問。
久松さんは28才の時に脱サラされてこの農業の世界に入られたという。
「最初は環境問題などからこの世界に入りましたけど、お金をもらうようになってからはプロ意識が出て、変わりました。」
そんな久松さん、農業で生活出来るまではそれでも5年近くかかったという。
「農業は初期投資がかかる割に、回収できるまでに時間がかかります。」
どことなく、ビジネスマンのお話を聞いているように感じたのだけど、御自身が「頭から農業に入った」と言われるように、考えを明確に言葉に出来る人だな、という印象を持った。
そんな久松さんも、やはり大切なのは“土”との事。
「人間は農業において、本質的な部分には関われませんから。」
久松さんの頭には、辿り着きたい場所への道順が全て書かれた地図があるかのように思えた。逆に、久松さんがヒデさんに対して、「どうして農業をまわってるんですか?」と質問。
「単純に、食べる事は生活の基本だと思いますから。それと、世界中をまわって、色んな場所で貧困を見て来ましたけど、貧しい人の数だけならアジアが圧倒的に多いんですね。けど、東南アジアは土地が肥沃で、貧しくとも食べ物はあるんです。アフリカはそうはいかず、土地が乾いていて食べ物がないんですよね。」
なんだか深い話になって来た矢先、久松さんが土からほうれん草をとってくれた。野菜を食べれないヒデさんの代わりに僕と大島が食べる。
ほうれん草についた土に、正直なところ少しだけ抵抗を覚えたのだけど、食べてみると、なんとその土の味も含めて、とても甘くて美味しかった。
普段、料理の味を気にする事はあっても、食材の味を意識する事はあまりなかった事を思い出させるほどに、違いを感じた。

 

 

それからフルーツトマトの宮澤農園さんへ寄ってからこの日は終了。
茨城の旅の始まりは、食が多くて得した気分だ。

茨城中編1へ続く

■Staff Profile
日本全国47都道府県の旅で、現場マネージャー兼、カメラマン兼、ドライバーを担当。
10代でサッカーをするために単身ブラジルへ渡った経歴の持ち主で、
ポルトガル語・英語・フランス語を話す。