2012.03.15

神奈川日記 前編

旅は神奈川県へ。埼玉同様、とても身近に感じつつも、これまで横浜や江ノ島くらいしか行った事はなかった。「色々あるし、色んな人も沢山いるから訪問先を考えるのも大変だよ。」とヒデさん。彼が言う様に、やはり東京が近いという事以外に、何か特別な魅力があるのかもしれない。

最初の訪問先は箱根寄木木工の金指ウッドクラフトさん。

 

 

僕は恥ずかしながらもこの寄木というのを初めて見たのだけど、様々な種類の木を寄せて作るカップやお皿などは、まさかそれが別々の木が寄せ合って作られているとは思えないのだけど、それぞれの木には自然の色がそのまま残されているので、あぁ、違う木が寄せて作られてるんだな…と初めてわかる。
箱根駅伝の優勝トロフィーは、こちらでもう16年も続けて作られているとの事だけど、よくある光っているだけで無機質なトロフィーなんかより、絶対にこっちの方がいいなと思った。

 

 

それから僕らは三浦半島へ移動。ガラス工芸の潮工房を訪問。
こちらの江波冨士子さんとは茨城の旅にて偶然お会いしていて、ヒデさんがその作品をとても気に入った事から今回の訪問が決まった。
江波さんは笑顔がとても素敵で、声も話し方も優しさに溢れているような方。一緒に制作をされている作家の小西潮さんにも、実際に作品作りを見せて頂いた。ガラス工芸とは火をどれだけ上手に操れるか、というのもひとつの要素なのだと思うのだけど、江波さんはじめ職人の方々は火使いの達人なのだと思った。表現が難しいのだけど、熱で柔らかくなったガラスを、ビローンと伸ばしたりする…。ものすごい熱を発しているので、当然危険でもある。僕らは離れた場所から無言でそれらの光景を見守った。

 

 

ヒデさんも体験。目を守る為に皆さんサングラスをしているのだけど、ヒデさんも特別にご用意頂いたのを着用。なんとなく見慣れない…。
ガラスを炉に入れて柔らかくして、そこから出して冷めやらぬ内に少しずつ形を作っていくという作業。限られた時間内に正確に作業を進めなければいけないので、さすがにヒデさんでも難しかったようだ。
江波さんの作品をとても気に入ったヒデさん、帰りに友人へのプレゼントにしたいと色々注文方法などを聞いていた。この人は、洋服以外で何か物を自分の為に買う事はあるのだろうか。

 

 

2日目、朝から鎌倉にある鶴岡八幡宮とその境内にある博古堂とまわってから、三浦市の高梨農場を訪問。こちらには色々な場所からレストラン関係者などが直接野菜を買い付けに来られるとの事で、この日も僕らが到着すると既にお客さんがいらしていた。高梨さんは年間150種類以上もの野菜を育てているとの事。自分は一体何種類の野菜の名前を言えるのだろうと少し考えてみたけども、8つ目辺りで出てこなくなってしまった。
高梨さんは野菜の美味しさについて話された中に、「適期がとても大切です。」というのがあった。それについてヒデさんが言う。
「僕も色々な人からお話を聞いてみて思いますが、土壌や栽培方法などは色々あるけども、どれにも共通する大事な事って、穫れたてから消費者の手に渡るまでの時間がどれだけか、という部分ですよね。」
確かに…と思った。
畑からは海が見えていて、潮風のおかげで空気が味付けされているようで最高においしい。この日の気温は9℃だったのだけど、背中を照らす太陽の光りはとても温かかった。ここ三浦は、そんな環境な上に都心も近い事もあり、農家さんが悩まされている後継者問題もあまりないという。これを聞いた時何となく、神奈川って良い場所だな、と思った。

 

 

3日目、朝は5時半に宿を出発。この日の予定の目玉である、アナゴ漁体験の為に柴漁港へ。船酔いが心配な僕は事前に酔い止め薬を飲む。ひたすら、揺れない事を祈った。早朝と言う事もあり、とにかく寒い…。サッカーのベンチコートを用意していたのだけど、それがなかったらと思うとタダでさえ寒かったけど更にゾッとした。
まだ20代半ばの船乗りの方に、「どのくらいの時間が掛かるのでしょうか…?」と恐る恐る聞いてみると、「だいたい6時間くらいですね。」とサラリ。色々な不安を抱えながらも出港。数分経つと、冷たい海風に足先から体温を奪われていくのがわかる。
最初のポイントに到着するまで、ヒデさんも遠くを見ながらひたすらジッと待つ。僕は目を閉じて、とにかく酔わないように酔わないようにと祈っていたら…どうやらそのまま寝ていたようで、気付けば2時間が経っていた。
船頭に目をやると、無数の海鳥に囲まれながら、ヒデさんが漁師さんと見間違うような身のこなしで海からアナゴが入っている筒を引き上げていた。

 

 

前半はグッスリ寝ていた事を忘れて言えば、終わってみると約6時間はアッと言う間に感じた。帰路についた船尾では、ヒデさんが満足気な表情を浮かべながら、充実感にも似た表情を浮かべていた。暴れるアナゴについていた泥が、ヒデさんの顔にも飛び散っていた。そんな表情を見るのは、現役時代以来かもしれないな、と思った。

 

 

神奈川日記中編1へつづく

■Staff Profile
日本全国47都道府県の旅で、現場マネージャー兼、カメラマン兼、ドライバーを担当。
10代でサッカーをするために単身ブラジルへ渡った経歴の持ち主で、
ポルトガル語・英語・フランス語を話す。