2012.03.15

神奈川日記後編

7日目、まずは早朝から箱根神社へ。
パラパラとフロントガラスを滑るような雪。芦ノ湖沿いは幻想的な雰囲気。
神奈川という事で侮っていたのだけど、節分の日にはマイナス13℃を記録したというから驚きだ。

箱根を出た僕らは横浜市へ移動。陶芸家の大槻智子さんを訪ねた。
大槻さんはまだ30代前半の若い作家さん。作風は、なんというか、多分誰もがそう思うのだろうけど、まるでお菓子やケーキのような、甘い香りが漂って来るような錯覚を覚えるもので、とても女性らしさが溢れていた。

 

 

大槻さんは学校で陶芸を学ばれた訳でなく、代官山の陶芸教室で学ばれたという。彼女からは、真っ直ぐさを即座に感じる事が出来た。作品を作る事が、好きで好きでたまらないという気持ちが、表情や声の感じなどから伝わって来た。言葉からは、その言葉が持つ意味以上のものが伝わって来る。何と言うか、圧倒されるのだ。
そんな大槻さんを良く表すエピソードがある。
「私は贅沢陶芸なんです。一度、本当の作家さんの生活というものに、本当に自分が入れるかどうかが知りたかったので、それで愛知県の常滑に2年半住みました。」
自分のやりたい事の為に生活の場所までを変える事はとても大変な事だと思うのだけど、きっと彼女にとっては、常滑に行く事と何かが天秤に掛けられた訳でもないのだと思った。何かに真っ直ぐになるという事は、きっとそういう事なんだろうと教えられた。

 

 

この日最後は陶芸家の中島克童さんを訪問して終了。
そして8日目、最初に川崎市岡本太郎美術館へ。ここ、生田緑地という素晴らしく気持ちの良い公園の敷地内という絶好の立地。車で駐車場までの道を案内して頂いたのだけど、ノロノロと公園内の緑に囲まれた木漏れ日の中を進むのはものすごく気持ちが良かった。
岡本太郎という芸術家の名前と顔は知っていたのだけど、この美術館で目にした作品からは強烈なエネルギーを感じさせられた。話を聞いて驚いたのは、岡本太郎は意外と背が小さかったという事。写真やテレビ画面で見ていた彼のインパクトからは、無意識に大きな何かを感じていただけに、作品より何よりも、その話が一番印象に残っている。

 

 

それから次はパティシエの鎧塚俊彦さんが小田原にオープンした一夜城ヨロイヅカ・ファームへ。ここは鎧塚さんの数年来見ていた夢が叶った場所、との事で、テーマは地産地消。車のナビには反映されていない道を丘の上へと進んで行く。本当にこの先にあるんだろうか…と不安になった頃にお店を発見。お客さんでごった返す中、鎧塚さんが笑顔で僕らを迎えてくれた。
カフェレストランと並んだ地産品コーナー。スイーツが大好きなヒデさんは多くのお客さんに混じってトレー片手にパンやお菓子を選ぶ。いつも通り、気になったものを多種類購入して車の中で皆と分け合って食べる、という有り難くも古き良き日本の風習が旅の車内にはある。
まわりには養蜂用のクローバー畑や果樹園があり、順々に案内して頂いた。
何もなかった土地を地元の協力者の方たちと共に自ら開墾されたとの事だけど、その労力と言ったら想像も出来ないほど。まだまだイメージされている完成形には程遠いらしく、「あそこはもっとこうして…」というような未来の絵を僕らにも語って下さった。ただ、この旅で訪問する多くの方々と同じように、その絵は間違いなく近いうちに完成させられるのだと思う。そして何より、鎧塚さんを知ったほんの数十分の内に、「きっとこの人ならやってのけるな…」と確信させられてしまう何かをこの人も持っていたのだけど、それはもしかしたら、今回度々感じてきた、「真っ直ぐさ」なのかも知れない。

 

こうして神奈川の旅は終わった。
神奈川県は広く、東京が近い事を差し引いても、とても魅力的な県だった。
日記では書き尽くせなかったのだけど、他にも鎌倉にある沢山のお寺、横浜や箱根の数々の美術館なども訪問した。海があって、山があって、都心も近い。高梨農場で聞いた、「後継者問題もあまりない」、という話はこれまでの旅では絶対に聞けなかった話だ。
葉山や逗子辺りの海沿いを何度も車で走ったのだけど、その度にヒデさんが呟いていた。

 

「ここだったら住んでみたいな…渋滞がなければ…。」

 

彼からなかなかこんな言葉は出ないのだから、どれだけ良い場所かがわかる。
渋滞がなければ…。
海沿いへ行ってみれば、サザンの歌になる魅力もわかるし、箱根や芦ノ湖の付近は都心からすぐとは思えないほど本当に気持ちがいい。
そしてもうひとつ、多くの方に通じる「真っ直ぐさ」、というのが今回はとても心に残っている。
多分、同じ様にそうなりたくても簡単にはなれないし、皆がなれる訳でもないのかも知れない。けど、そうありたい、と思う事で少しでも近づけたらいいな、と思う。

 

次はいよいよ、東京をまわる。

 

■Staff Profile
日本全国47都道府県の旅で、現場マネージャー兼、カメラマン兼、ドライバーを担当。
10代でサッカーをするために単身ブラジルへ渡った経歴の持ち主で、
ポルトガル語・英語・フランス語を話す。