2010.08.04
石川日記中編2
3日目の朝はこの旅では非常に珍しい朝食を食べに、「御料理 貴船」へ。
ヒデさんは基本的に朝食を食べないのだけど、別に食べられないという訳ではないらしく、お腹が空いていれば食べるのだな、と車の中で思った。
浅野川の川沿いにある、京都を彷彿とさせる古い街並の一角、この貴船は朝食がとても有名らしく、本来朝食は日曜日のみ、午前7時から9時まで、4組限定完全個室。実は、既に満席だったのだけど、ご店主のお計らいで特別に土曜日の朝に朝食を出して頂ける事になった。
いざ料理が運ばれて来ると、そのお味は噂に違わぬもの、というよりも想像していたよりもずっと美味しかった。ご飯にうるさいヒデさんも手放しに美味い美味いの連発。

ちょっと前まではこの手の和食が苦手だった僕なのだけど、年をとって僕の味覚が変わったのか、それとも単に貴船の出す食事が美味なのかと考えるが、きっと後者に違いないのだろう。ヒデさんも僕も完食。
「あー美味しかったですねぇ…」
と、お腹をさすっりながら部屋の隅を見ると、牧がこっそりお代わりをしていた。
金沢市にある貴船を出て、僕らが向かった次の訪問先は小松市に工房を構えておられる九谷焼の陶芸家 吉田美統さん。
この方、人間国宝である。釉裏金彩(ゆうりきんさい)と言われる金箔の薄箔と厚箔を使って遠近感を出す手法が特徴らしく、ヒデさんもここでは金箔を小皿に貼付ける作業を体験。

それから和傘職人の松田弘さんを訪ねた後、木工作家の灰外達夫さん宅へ。
道路から坂を登った高台にあるお家は、山に囲まれた素晴らしい立地。屋内から見る庭の眺めに、細かい部分だけど作家さんならではのセンスを感じた気がした。

そこから今度は車多酒造さんへ。
車多酒造さんでは、遂に3人目の能登杜氏四天王の中三郎さんと対面。
4人目の方はもうお亡くなりになられたという事なので、僕にとってもなんとも感慨深い対面に思えた。
ヒデさんも中さん自身からお酌してもらい、とても嬉しそうだった。

4日目、朝から金澤鳥鶏庵へ。
こちらは店舗でカステラなどを販売されているのだけど、その材料となる卵を産む烏骨鶏という鶏も自社で飼育なさっている。
実際に鶏がわんさかいる飼育所を訪ねる。烏骨鶏は繁殖力が弱いらしい。
例えば、普通の鶏は産まれてから卵を産み始めるまで90日ほどらしいのだけど、烏骨鶏は300日もかかるという。

鶏を見た僕らは店舗へ移動。カステラなどの試食タイムだ。
原材料の半分以上が烏骨鶏の卵で作られたカステラ。ヒデさん曰く、「濃厚で噛んだ時の風味がすごい…」との事。
卵掛けごはんも出して頂いたのだけど、この卵が1玉500円するとかしないとか…という話が何よりも印象に残っている。
10個入りパックで、5000円という事なのだ…。

訪問は続く。今度も同じ金沢市内の九谷焼、陶芸家の中村卓夫さん。
中村さん、サラリーマンを経て、30代半ばで作陶を始められたとの事なのだけど、お宅にお邪魔してすぐに「あぁ、アーティストの家だな。」と感じさせられた。
中村さんの言葉で面白かったのが、「色々な作品がありますよね、けどよく見ると、みんな作ってはいるけど、壊してない。」というもの。
もう、発想が、観点がまったく非凡なのだ。
2階には、床のあちこちに作品が並べられていた。中村さんに色々と説明を受けながらヒデさんも楽しそうに話をしている。僕にとっては、わかるようなわからないような…。
ただ、その中でもやはりアーティストの血が騒ぐのか、高橋カメラマンがいつになく楽しそうに写真を撮っているのが印象的だった。

その後で釜師の宮崎寒雉さんを訪ねた後、人間国宝である彫金師の中川衛さんを訪問。
ここでヒデさんは象嵌(ぞうがん)という、ある型に金属を金槌で嵌め込む作業を体験。もう始める前から、「あ、この手の作業はだいたいハマるので長くなるな。」と思っていたのだけど、案の定、ハマった。

中川さんは金沢美術工芸大学工芸科の教授でもあるという事で、大学を訪ねる事に。久しぶりに学校というものに行ったのだけど、あの雰囲気は一体何なのだろう。自由と希望という要素が入るだけで、どうしてこうも場の雰囲気が変わるのだろうか…。
