2010.08.04

石川日記中編3

そして菊姫合資会社さんへ。
まず通されたのは囲炉裏の間。火にかかった茶釜の湯で僕らにお茶をいれて頂く。代表の柳さん、囲炉裏の前にでんと座るその姿、とにかく雰囲気がある。
ここではお酒と料理の話で盛り上がる。ヒデさんの「日本酒を飲まれるならやはり和食で、ワインだとやはり洋食ですか?」という問いに、柳さんがこう答える。
「ワインは料理を選びますね。しかし日本酒は万能です。料理を選びません。」
お米から作られる、という点で確かにそうなのかもしれないけど、例えばオイルパスタなんかにも、ワイングラスで日本酒を飲めば確かに美味しそうだな、と想像してみた。

加賀にある宿へ着く途中、コンビニによる。
酒好きの高橋カメラマンが、日本酒コーナーで腰を曲げて何かを探している。
「菊美人ないかなぁ、もっと飲みたかったなぁ…。菊美人ないなぁ。」
お目当ての物がないのか、ちょっと残念そうだ。高橋カメラマンは、きっとさっき行ったばかりの「菊姫」の事を探してるんだなと思った。
高橋さんは、よく物の名前を間違える。

5日目。もう加賀に3泊しており、連日のように北陸道を通って北上している。その途中、何度も目に飛び込んできた看板がある。
「美川 県一の町」
笑えるとかそういうのじゃなくて、普通に、「あぁ、引っ掛けてるんでしょうねぇ…」と牧が呟いていたのが笑えた。

次の日。朝はまず、兼六園へ。
猛暑続きの8月上旬だけど、朝の7時頃までならほんの少しだけ、朝の気持ち良さを感じる事ができる。レンズの先に見つけた鳥が、とても優雅だった。

兼六園でのお散歩を終えた僕らは、銅鑼作家の魚住為楽さん宅へ。
この方もまた、人間国宝だ。こちらには秋元さんにも来て頂いた。
銅鑼というと、あの金属の円盤を枠に吊るして撥(バチ)で鳴らすあれだ。
魚住さんは、この「どぅぅぅ・・・・ん」と低く鳴り響く音を、「侘び寂びの音」と表現される。秋元さんが、「これ、音というか、波だよね!?」と言われたのだけど、まさに波だと思った。
体が揺れる、そんな感覚を覚えたのだ。

魚住さん宅の次は大樋焼の大樋長左衛門さんを訪問。
ご長男で、デザイナーの大樋年男さんとヒデさんはお知り合いだったという事もあり、訪れるのは2度目だった。
ヒデさんが長左衛門さん、年男さんとお話されている時、僕らにもお茶を大樋さんの器で出して頂いた。
器を持っていると気持ち良くて、目を閉じてみる。すると何か、手の中にその器があるのが自然に感じて、何も持たないより楽な感じというか、もう何を言ってるのかさっぱりわからなくなったけど、とにかく不思議とその器をひどく気に入ってしまったのだ。

話の中で、伝統工芸は横の繋がりも多く、業種は違えど知り合いも多いとの事。ヒデさんが既に旅などで会った色々な方が、大樋さんとの共通の知り合いだったりして話は大いに盛り上がっていた。
そして少し嬉しかったのが、僕にもその共通の伝統工芸の方々の名前が結構わかった事だった。それは旅を始める前からすると、考えられない事なのだ。

昼御飯はお寿司の「鮨 志の助」へ。
ここはヒデさんがよく行く「弥助」で修行されていた方のお店。
既に非常に有名なのだけど、シャリとネタ、両方が絶品だった。
「牧、取るの早いよ。皿に乗ってからなくなるまで、1秒もないじゃん…。」
とヒデさんが突っ込む。
ちなみにヒデさんはこの後、石川に来るという友人にすぐお薦めしていた。

石川日記後編へつづく
 

■Staff Profile
日本全国47都道府県の旅で、現場マネージャー兼、カメラマン兼、ドライバーを担当。
10代でサッカーをするために単身ブラジルへ渡った経歴の持ち主で、
ポルトガル語・英語・フランス語を話す。