2009.12.09

Nakata × Zidane 特別対談

 

共に2006年ドイツW杯を最後に現役を引退した二人の対談がついに実現

 

「サッカーというのはまだまだ可能性があるなと思う。」 -中田

「是非、ここ日本で何か一緒に出来たらいいね。」 -ジダン

 

中田
僕ら2006年の同じ時期に引退しましたが、この3年間何をしていましたか?

 

ジダン
この3年間は幸せなことに非常に多くのことができました。
積極的に色々なことへ挑戦し人生を楽しんでいます。自分のことも色々できましたし、
選手時代にあまり持てなかった家族との時間がもてました。

 

中田
この前もカンデラの試合(注1)でも一緒にプレイしたけど、色んな国でチャリティの試合とか、色々な活動をやっているのが目に見えて、それをメインでやっているのかなと思うんだけど、それは現役時代からやりたかったことなのかな?

 

ジダン
チャリティ活動は私にとって非常に重要です。なぜなら私に多くを与えてくれたサッカーへ恩返しをしたいから。
チャリティを通じてそれが出来るので私は幸せに思っています。

 

中田
僕自身も2年間ぐらいずっと海外を旅していて、本当にサッカーの持つ可能性、世界中で色んな影響を与えられる、そ れに気がついてサッカーで何かをやっていきたいなと自分の中で強くなって、試合をオーガナイズしたり、世界各地に行って子供たちと試合をやり始めているん だけど、やっぱりサッカーというのはまだまだ可能性があるなと思って。

 

ジダン
そうですね。君の活動は素晴らしいと思います。やはり自分で出来ることを各自考えてやっていけば良いだろうし、私も是非ここ日本で何か一緒に出来たらいいですね。問題点はヨーロッパと日本の距離ですが、旅行は楽しいですし、いつか一緒に何かやりたいですね。

 

中田
この間カンデラの試合(注1)の時に一緒に試合をやったけども、とても上手かったし、まだ現役に戻ってもできるとは思うんだけど、実際現役に戻りたいと思う時はあるのかな?

 

ジダン
サッカー場は懐かしいと思いますが、現役に戻りたいとは思わないですね。君も他の選手もみんな私と同じ気持ちだと思います。
ただカンデラの引退試合のように昔の仲間達とプレーするのは好きです。
でもひとつ言いたいのは過去に私たちは何度も対戦していますが、一度君がトリノに来たとき私にひどいことをしたんですよ。(笑) 君のゴールで私は優勝を逃した。(注2)覚えている?

 

 

中田
あのユーベとの試合はもちろん覚えているけども。(笑)
僕は当時も今も選手としてジダンが一番、完成されたというか、まるで息をしているかのようにプレーをすると思って、そういう意味で一番すごい選手だなと思ってて、逆にジダンが今観てておもしろいと思う選手がいるかな?

 

ジダン
面白い選手は沢山いますが、一番印象に残るのは21~22歳の若い選手です。その若さで成熟した経験を持っているのは非常に興味深いです。特に印象深い選手を一人あげるならば、私が一緒にプレーしたからかもしれませんが、フランス代表のリベリー(注3)です。
今後リベリーの活躍を沢山聞くことになるでしょう。

 

中田
リベリーの好きなスキルというかプレーはある?

 

ジダン
彼のプレーは全体的に好きです。彼はプレーする時に理屈で考えたりしません。他の選手と違って子供のように自然にプレーします。理屈ではなく感性でプレーするのが最高の選手です。 まさにリベリーがそうなんです。

 

中田
そういうプレーヤーになるためにはもともと生まれもった感覚的なものなのか、練習をつみかさねた結果でなるのかどっちかな?

 

ジダン
両方だと思いますが、やはり生まれもった才能は必要です。プロになりたい人は沢山いますが、誰でもなれるわけではありません。もしプロになれるだけの才能があれば練習でその才能をのばさなければなりません。私も現役時代は本当に沢山の練習をしました。
もちろん才能にも恵まれていましたが、努力を怠ったことはありません。リベリーもこの4年間非常に練習しフランスを代表する選手になりました。練習の積み重ねが彼を成長させたのです。

 

中田
僕たちが辞めた3年前と今とではサッカーが少しづつ変わってきたと思うんだけど、特にスピードが早くなってきてい るし、あとは組織としてのプレーが重要になってきてる部分があって、素晴らしい選手がいても試合に勝てなかたり・・・、いま現在サッカーにおいて重要なも のは何だと思う?

 

ジダン
確かに君が言うようにテクニックよりもフィジカルが重要視されているのは気になります。ピッチから消えた役割がいくつかありますが、それはよくないと思います。
例えば10番というポジションは消えつつあります。私にとって本当の10番とは試合を作り出すポジションなんですが、最近の10番はテクニックを犠牲にしてでもフィジカルを優先する傾向にあります。
なので私が現在のサッカーでプレーするのは苦労すると思います。
なぜなら今日大切になってくるのはテクニックよりもフィジカルの部分だからです。
このような変化を見るのは残念ですがこれが現代サッカーの現実です。選手はより大きくがっしりとどんどん体格がよくなっていくでしょう。

 

中田
僕も今日のサッカーというのは肉体的強さというのとスピードが非常に大事になってきていると思っていて、その中でいかにテクニックを出すかというのは大事なわけで、現役時代のジダンをみていると今でも問題はないと思うけど。(笑)
逆に言うとスピードと体力が重要視にされているなかでサッカーを外からみるとサッカーの面白みが少し減ったような気が僕個人としてはするんだけど、そこはどう思う?

 

ジダン
面白みが減ってきたとは思いませんが、みなさんに言っておきたいのは、10番のポジションやテクニカルな選手を守り続けなければならないということです。 なぜなら私が観たいのは美しいサッカーだからです。攻撃だけではありません。守備でも美しいプレーが観たいのです。美しいプレーは守らなくてはいけません。これは皆さんも同じ気持ちだと思います。

 

中田
これからサッカーはグローバルでアジアも南米もアフリカもヨーロッパもみんなにチャンスがでてきている、その中で アジアのチームはやっぱりW杯にでても一歩壁が抜けられない、その中でアジアがよりやっていったほういいんじゃないかと、もちろん体格的にも大きくない し、ただ速さがあるだけだというところで、今まで対戦してきたなかでこれはやったほうがいいというのはある?

 

ジダン
アジアの選手は我々よりも速さやテクニックはありますが、私が特に印象的に思っているのが、ピッチでの振る舞いです。ボールを失っても仲間のせい にはせず、常に仲間を信頼しています。ヨーロッパでは手を上げたりしますが、アジアではそんなことはありません。常に礼儀正しく仲間を信頼し、素晴らしい 団結力を見せます。
この10年で非常にレベルが上がり、ヨーロッパに追いついてきていると思います。
君はヨーロッパで成功した最初の選手ですし、アジアのレベルを世界に示しました。
ただヨーロッパに個人では追いついてもチームレベルではまだまだです。
ブラジル代表やイタリア代表と互角に戦うのはまだ難しいでしょう。
しかし10年前と比べると差は縮まっています、それは特筆すべきことだと思います。

 

 

中田
最後に。やっぱり今でもジダンはサッカー界で最も注目の一人ですが、自分がサッカーの中で、個人でもいいけど、やっていきたいことは何かな?

 

ジダン
現在レアルマドリードで少し仕事をしていますが、いつかクラブの仕事に専念したいと思っています。今年からユース育成部門とトップチームの両方で仕事をしていますが、ユース育成部門は今までと違った世界なので勉強しなければいけません。
私はまだ37歳で若く時間もあるので色々と学びたいと思っています。

 

中田
監督はやってみたい?

 

ジダン
監督よりもクラブ幹部として運営にたずさわりたいと思っています。また若い選手と接することが本当に大切なことだと思っています。
なぜなら若い選手たちがサッカーの未来だからです。

 

中田
ありがとうございました。
ジダン
アリガトウ。

 

(フジテレビ系列「すぽると!」マンデーフットボール 2009年11月16日OAより)

 

ジダン プロフィール ジネディーヌ・ジダン(Zinedine Zidane)

1972年6月23日生まれ 37歳 元プロサッカー選手。2006年ドイツW杯決勝イタリア戦を最後に現役を引退。

FIFA最優秀選手賞、バロンドールなどの個人タイトルに加え、 ワールドカップ、欧州選手権、チャンピオンズリーグなどの主要タイトルを全て制覇。サッカー史上最も偉大な選手と評価されている一人。

 

(注1)
2009年6月5日にイタリアのローマ行われたヴァンサン・カンデラ(フランス)の引退試合。中田は2001年、A.S.ローマがスクテッド獲得 (セリエA優勝)をしたシーズンのチームメンバーとして、ジダンは1998年のワールドカップ優勝フランス代表チームメンバーとして試合に出場。
(注2)
ASローマが18年ぶりにスクデット(優勝)したシーズンでASローマとユベントス(ジダン在籍)が優勝をかけた大一番。2点をリードしたユベン トス、苦しい展開の中、79分に中田の強烈なミドルシュートを突き刺し反撃ののろしを上げ、ロスタイムには同点に追いつきドローに持ち込む重要な仕事を果 たした。
(注3)
フランク・リベリー(Franck Bilal Ribéry)フランス出身のサッカー選手。ポジションはミッドフィルダー。在籍チームはバイエルン・ミュンヘン(2009年11月時点)。