2012.10.16

福島日記中編1

3日目、まずは朝7時より小平潟天満宮へ。
ここは猪苗代湖のすぐ脇にあるのだけど、取材を終えた後、「湖畔まで行けるのかな?」とヒデさん。行ってみましょうという事で僕らは湖の方へ。
この時期(10月上旬)の東京はまだ25℃〜27℃の気温だったのだけど、猪苗代湖のこの時の気温は僅かに7℃…。
寒いのでそろそろ戻ろうと車の方へ歩いていると、朝一で東京を出て来た渡辺プロデューサーが合流した。ただでさえ変わったファッションセンスの彼なのだけど、この日はいつも以上にどこかおかしい。するとスタッフの服装に厳しいヒデさんが、渡辺さんを一瞥してからサラッと呟いた。
「この寒さで、麻のジャケットはないんじゃない?」
東京と福島、車で3時間の場所でこうも違うのだ。
 

それから次は会津地鶏みしまやさんを訪問。こちらは自社で飼育、処理工場まで持った地鶏専門店。飼育から処理まで手作業で一貫して行われている。
小平さんにお話を伺う。
「会津地鶏は見た目がきれいで、ここでは通常の倍の期間を掛けて飼育しています。」
小平さんは東京農業大学の畜産学科を学ばれてからは、造園業に就かれていたという。この道に入られてからは、まだ7年ほどとの事。
鶏舎、処理場と見学させて頂いた後、この日は特別に炭をおこして、ご自慢の鶏を焼いて頂く。寒い中、小腹が空いていた僕らにとってはこの上ない展開だ。食べてみると、食感はまるで魚のようで、旨味(脂)がすごい。ただこの脂にはしつこさがなく、臭みもない。止まらずに、どんどん食べてしまう。
 
仕事という事を忘れて膨らむお腹に至福を覚えていると、「どんな味を目指されてるんですか?」とヒデさんの質問が飛んだ。
「脂の旨味と、噛めば噛む程出る肉の旨味、そのバランスの取れた味でしょうか。」
と小平さん。ヒデさんはとても味にうるさいのだけど、どうしてこうもうるさいのだろう、育ちか?などと漠然と思っていた。ただこうして生産者さんの目指す味やこだわりを聞けば、確かにそれを意識して食べるし、その旨味なりこだわりの要素を舌先で探す。自分が口にする物がどこで、誰のどんな思いで作られたものかを意識すれば、1日がこれまで過ごしたものとは全く別の、充実したものになるかもしれない。
 

それから僕らはからむし織の齋藤環さんを訪問。
齋藤さんは神奈川県の出身で、こちらに移られてから9年が経つという。
「最初来た時は、雪がすごくて驚きました。」と話す齋藤さんは、とても穏やかな雰囲気の女性だ。工房は古い民家なのだけど、豪雪の時期は1階部分が雪で埋まるとの事…。中に入ると、沢山の作品が並んでいる。普通の民家で、下は畳なのに、台の高さが絶妙で、ものすごいセンスを感じてしまった。
車で来ながらも感じたのだけど、この付近は本当に自然の王国。余計なものが一切なく、ただ、その分困る事も多そうだ。
「不便はありますか?」とヒデさん。「ないです。」と齋藤さん。それに対して、「コンビニはあります?」とヒデさん。「ないです(笑)。」と齋藤さん…。
この会話、どこか面白くて、ここでの暮しと齋藤さんの人柄をとてもよく表しているように思えた。
 

この後、花泉酒造さんを訪ねてこの日は終了。
4日目、まずは早朝より「塔のへつり」へ。ここは南会津東部を流れる大川が形成する渓谷で、国の天然記念物に指定されている。早朝で人もいなく、いつもの特別感を得ることが出来る。早起きも、これを得られる為であれば全く苦にならない。朝靄が山を覆っていて、とても幻想的で美味しい空気を満喫する事が出来た。
 

次の訪問先は大内宿。ここは1640年頃に整備された宿場町なのだけど、足を踏み入れて1分歩けば、タイムスリップしたような錯覚に陥る。500mほどのメイン通りには沢山のお店があるのだけど、皆さんはまだ開店に向けての準備中。
通りを抜けた先にある高台に登る。大内宿を一望出来る場所で、お話を伺う。肌寒さを感じながらも、森が吐き出す美味しい空気を胸いっぱいに吸い込むと、自分が自然と一体化したように感じる事が出来た。長野の白川郷もそうだったけど、ここの雪景色もすごそうだ。
 

こちらではそばが有名で、箸の代わりにネギを使って食べるのだけど、ライターの川上さんが挑戦。その姿に、ヒデさんも苦笑いを漏らしていた。
 

その後、国権酒造さんへ寄ってから、鈴木農場を訪問。鈴木光一さんにお話を伺う。鈴木さんは新しい品種や珍しい品種の野菜・野菜苗の栽培に挑戦されているとの事だけど、その数は年間200品種にも及ぶという。
畑に案内して頂くと、その大きさに驚かされる。ヒデさんが鈴木さんのお話を聞いている間、時々手伝っているという、まだ学生の息子さんに聞いてみた。
「どの品種がどこにあるか、わかります?」
「いえ、さすがに僕はわかりません。ただ、父はどれがどこにあるか、全部わかります。」
農業にも詳しいライターの川上さんにその事を伝えると、こう話してくれた。
「腕と知識とセンス、それに加えて農業に対する愛がなければこの広い農場を見るには難しい。」
鈴木さんは育苗もやられるのだけど、「今の種苗屋さんと農家さんの間のような存在…?」と質問すると、「そうです!」との事。
「育苗、野菜、お米をそれぞれ3分の1ずつ、それと種ですね。」
明るさと優しさが覗く鈴木さんからは、同時にタフだなという印象も強く受けた。これまでに御会いして来た数々の農家さんを見て思う事は、自然を相手にする農業という仕事は、精神的に相当タフでなければやっていけないという事だ。
こちらで栽培されたとうもろこしを食させて頂く。糖度は21℃と甘く、当然美味しかったのだけど、鈴木さんの人柄を知った後で頂いただけに、その美味さは何倍増しにもなっていた。
 

 
この日は最後に諸橋近代美術館へ行って終了。
 
福島日記中編2へつづく
 

■Staff Profile
日本全国47都道府県の旅で、現場マネージャー兼、カメラマン兼、ドライバーを担当。
10代でサッカーをするために単身ブラジルへ渡った経歴の持ち主で、
ポルトガル語・英語・フランス語を話す。