2010.05.03

滋賀日記

京都から東へ、渋滞がなければ30分もかからずに滋賀県へと入る。
滋賀県といえば琵琶湖。琵琶湖と山地で県の総面積の半分以上を占めているらしい。
最初の印象。「緑、というか、田んぼが多い。」
季節は田植えの時期。田んぼには水が張ってあり、全く動かない水面には山々が映し出されていて、まるで絵画のような景色を作り上げていた。
 
まずは農家「百匠屋」の清水大輔さんを訪問。
滋賀では若い農家さんが集まる「konefa(コネファ)」というコミュニティがあり、清水さんもその一人。
現場を見せていただいたあと、ご自宅にお招きいただき、清水さんの奥さんが腕を振るって自慢のお米を土鍋で炊いてくれた。お米から湯気が立っていてまさにホクホクした感じだ。僕らスタッフも頂いてみる。うぅん…やはり土鍋で炊いたご飯は格別だ。
そしてその土鍋のお米とは別に、「ギャバ」という天然アミノ酸のひとつが入った、胚芽の部分が大きいのが特徴のお米も一緒に出してくれた。なんでも、食する事でストレスを軽減する効果があるらしい。
ここでヒデさん「なんか、ギャバの方がうまい。」という。
そして奥さんに「これも土鍋ですが?」と確認、しかし奥さん、何かもぞもぞしているなと思ったら、「炊飯ジャーです…。」
というまさかの答えが。
ジャーも、ものすごく進歩しているのだろうな…きっと。
 

 
その後もう1軒農家さんをまわってから、今度は池本酒造さんへ。
池本さんのお話の中で、「酒は生き物。違う味が出来てもそれを楽しむ。」というのがあったのだけど、寸分違わぬ味を作る事とは対極の、それもまた深いこだわりのようなものを感じた。
また、なんとヒデさんと同い年の、77年に造られたお酒があったのだけど、ヒデさん曰く、「ワインではこういう話もよく聞くけどね。まさか日本酒で同じ年のお酒があるなんてね。」と、さすがに初体験だったようで驚いていた。
 

 
初日の最後は白髭神社へ。
ナビが目的地まで後100mほどだと知らせてくれると、カーブを曲がった先の湖に、鳥居が立っていた。湖の中に、だ。
確かに珍しい。神社から結構な交通量のある通りを渡って、湖の脇まで行って曇り空の下の湖に立つ鳥居を見てみる。ライトアップも手伝ってか、何か神秘的なものを感じる。
ヒデさんは宮司さんと並んで、ずーっとその鳥居を眺めていた。
 

 
夜の宿は「L’Hotel du Lac」
琵琶湖の北を、右に湖を見ながら走って行くと、まるで本当のヨーロッパのリゾートホテルのような佇まいが見えて来た。
着いたらすぐに夕飯という話になったのだけど、なかなか上品なレストランらしい。
1度部屋へ向かう途中、ヒデさんが何度も振り返り、牧を見ては視線を上下させている。眉間には皺が寄っている。
「牧、そのかっこでレストラン行く訳じゃないよね?」
呆然とした表情で言葉を失う牧。
映像ディレクターの仕事は、体力と集中力、そしてセンスを要するものだ。身のこなしの素早さも求められる為、必然と格好はラフなものになってしまう。
部屋に戻り、ふと牧を見ると何やらお洒落…っぽいジャケットを羽織っているではないか。「あぁ、牧なりにさっきの言葉を気にしてるんだな…」と言葉を出さずに心で思った。
レストランに行くと、既に席についているヒデさん。
何やら、牧を凝視している。そして一言。
「それ、ちゃんちゃんこ?」
言い得て妙とはこの事で、牧のジャケットはつぎはぎが施されたような“多分”お洒落なデザインだったのだ。僕も耐え切れず、吹き出してしまったのだけど、それは誰も無視する事が出来ない程の、衝撃的ファッションだったのだ。
 
翌日、僕らは朝から日吉大社へ。
ここは本当に気持ち良い場所。森の中にある小川の脇道など、何時間でもその場所にいたくなるような、こんな場所だった。僕は普段は早起きが大の苦手なのだけど、こういう場所が近所にあるなら、毎朝でも早起きして来ると思う。それくらいの場所だった。
 

 
最終日の夜、近江牛の焼肉屋「千なり」へ。
同行していた取材チームの川上さんと高橋さんは夕方帰京する予定だったのだけど、美味しいらしいという事でヒデさんより「折角だから食べてったら?」とお誘い。では8時杉までということで来てくれた。
正直、僕はこれほど衝撃を受けた事がない。牛タン、アゴ肉がとにかく絶品、というよりも、全くこれまで慣れ親しんだものと違うのである。美味い肉にお酒が進むカメラマンの高橋さん。最終日という事で色々な訪問先の話が弾む川上さん。高橋さんに至っては顔が既に赤い。8時はとっくに過ぎていたのだけど、大の大人がこれほど楽しそうに笑って喋っているのはとても気持ちのいいものだった。
「ホテルに2人追加出来るか連絡してあげて。」とヒデさんが気遣う。
 
滋賀の旅は4月末のゴールデンウィーク直前に始まった。
出発前日、現地で合流予定の牧からメールが来た。
 
「旅ももう1年ですね…あっという間でした。2年目も宜しくお願いします!」
 
あぁ、そうか。そう言えば旅の出発地点である沖縄へもGWの真っ直中に行ったのを思い出した。牧が言うように、まさにあっという間だった。本当に「ん?あっ…」という感じで、1年が経ってしまっていたのだ。
がしかし、この12ヶ月ほど色々な人や物、知らない事、見た事のないものに出会ったのは、17歳の時に初めて海外で生活したその1年目くらいしか思い出せない。
ただ、これほどのスピードで過ぎ行く時間は、のんきな僕を容赦なく置いてってしまう。
旅はそろそろ折り返し地点。旅の出会いが教えてくれた事をしっかり自分のものとする事が、今後の旅の僕のテーマだ。
 
次は奈良へ行く。
 

■Staff Profile
日本全国47都道府県の旅で、現場マネージャー兼、カメラマン兼、ドライバーを担当。
10代でサッカーをするために単身ブラジルへ渡った経歴の持ち主で、
ポルトガル語・英語・フランス語を話す。